新年のウィンドウめぐり 永松仁美 昂KYOTO店主 お店が一斉に閉まる12月31日から新年にかけて、行き交う車も人気も無いピンっと張り詰めたような澄んだ空気感が昔から好きです。 まるで浄化されたような道という道は、両手を広げ、かけ出したくなるぐらいの自由を感じるから不思議です。 老舗店は勿論の事、特に新門前、古門前、寺町界隈の骨董街は注連飾りだけでなく、ショウィンドウには店主が心を込めて丹精を尽くした新年を祝うおめでた尽くしとなり、添える草花も品種少なき冬でさえ様々な趣向を凝らし、道ゆく人々への心配りを感じる無言のメッセージを贈り届けるのです。店主の言葉や説明が無くとも感じる事のできる貴重な数日。どこまでキャッチ出来るか分からないけれど、初詣の後の私の密かな愉しみなのです。 考えてみましたらば、お休みであるにも関わらずご主人の心意気をさらりと美しくそして控えめにショウィンドウに託す様は日本らしいなあと思うわけです。 季節に合わせた古布、手のひらにのる小さき古陶、たかが短冊されど短冊、洒落た表具に古染付……あそこに行けばここに行けばと、ご主人それぞれの今月のこだわりのとっておきが拝見出来る私のお気に入りウィンドウも様々です。 なんといっても勉強させていただけるのですから、気になればお尋ねする事よろしくもう一度拝見しようと伺えば、もはやお生憎様、違う子が鎮座している事なんて事も一人クスッと笑えます。どんなお嫁入だったのだろうと想像したりして、お友達のお家で再会した事さえあるからまたそこから話が尽きないのです。 そんなこんなで海外の商店の店先ウィンドウが気になる私は年末にこんなものまで見つけました(写真)。さっぱり美しく新年を迎えたい気持ちはどこも同じなのですね 笑 皆様どうぞ、この一年も御多幸多き美しき日々であります事、お祈り申し上げます。 月刊『目の眼』2024年1月号より Auther コラム|京都女子ログ 永松仁美(ながまつひとみ) 1972年京都生まれ。京都・古門前の骨董店の長女として育ち、結婚、子育てを経て、2008年京都・古門前に店を構える。2012年、祇園に移転しアンティーク&ギャラリー「昂KYOTO」をオープン。 RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2024年1月号 No.568 眼の革新 時代を変えたコレクターたち 骨董・古美術は変わらないよう見 えて、実はとても流行に左右され ています。明治期の茶の湯の変革、 大正から昭和にかけての朝鮮陶磁の発見と鑑賞陶磁の発展など、時代ごとにブームが起こり、人々の美意識を変える特筆すべき革新が 起こりました。その背景には新しい独自の視点を持った稀代のコレクターたちの存在がありました。 1月号はそうした「眼の下剋上」を行ったユニークなコレクターたちを紹介します。 雑誌/書籍を購入する POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 連載|真繕美 唐津の肌をつくるー唐津茶碗編 最終回 Ceramics | やきもの 小さな煎茶会であそぶ 自分で愉しむために茶を淹れる History & Culture | 歴史・文化 ビンスキを語る ビンスキは どこからきたのか 〜その美意識の起源を辿る History & Culture | 歴史・文化 骨董ことはじめ① 骨董と古美術はどう違う? History & Culture | 歴史・文化Others | そのほか 羽田美智子さんと巡る、京都の茶道具屋紹介 茶道具屋さんへ行こう Vassels | うつわ 骨董の多い料理店 進化しつづける「獨歩」の料理と織部の競演 Ceramics | やきもの 美術史の大家、100歳を祝う 日本美術史家・村瀬実恵子氏日本美術研究の発展に尽くした60年 People & Collections | 人・コレクション 連載|美の仕事・茂木健一郎 テイヨウから、ウミガメに辿りついたこと(壺中居) Ceramics | やきもの 源氏モノ語り 秘色青磁は日本に来たか Ceramics | やきもの 連載|真繕美 唐津茶碗編 日本一と評される美術古陶磁復元師の妙技1 Ceramics | やきもの 2023年8月号 特集「猪口とそばちょこ」 不思議に満ちた そばちょこを追って Vassels | うつわ 稀代の美術商 戸田鍾之助を偲ぶ People & Collections | 人・コレクション