コラム
019

京の本音/市田ひろみ

h078(1993.11月33回ACC TALENT AWARD)-1

私が緑茶のCMに出たのは平成五年(一九九三年)。二十年も前のことだ。

 

「ゆっくりしていかはったらよろしいやないの。今、美味しいお茶入れまっさかい。

新幹線? そんなん待たしといたらよろしいやないの。」
と笑顔でお客様を引き止めている横でさかさぼうきがことりと倒れる。

 

さかさぼうきといっても、若い人にはわからないかもしれないが、いやな人、早く帰ってほしいお客に、見えないところで座敷ぼうきを逆さに立てた。つまり、掃き出すということだ。

さかさぼうきは、当時コラムニストの天野祐吉氏もほめてくれたし、中高年層の懐かしい思い出をくすぐった。

 

このCMが評判になって、第二弾「京のぶぶ漬け」にも広がり、その年、私はACCコマーシャルフェスティバルの大賞を受章した。ほうきのお陰だ。
本音と建前を見事にユーモラスに表現した監督の手腕だ。京を語る時、ぶぶ漬けも俎上にのる。

 

人間国宝桂米朝師匠のライブを聞くと、絶妙の間あいのやりとりが面白い。

お客が帰ろうとする時に、

「ゆっくりしていかはったらよろしいやないの。ぶぶ漬けでもどうどす?」

「へえおおきに。いや、又、今度」

下駄を履く、靴を履くという段階に、ぶぶ漬けでもと言われて、又靴脱いで上がってくる人めったにいまへん。

 

ほんのおあいそなのだ。

桂米朝師匠はこれを「京のごちそう言葉」と言っているが、「へえ、また今度」

と返すことで、お互い貸し借りなしなのだ。言葉のあやと思ってほしい。

 

修学旅行で来たくらいでは、京の人の本音はよめまへんえ。

 

 


○私のお気に入り 五代目小川文齋作 ぐい呑 高さ6センチの可愛いぐい呑。もう10年位前になるだろうか。小川文齋先生から頂いたこの猪口。赤い色が気に入っている。紅彩(こうさい)と言う赤は、京焼でも先生独特の色になったそうで、今では私の可愛い宝物だ。

○私のお気に入り
五代目小川文齋作 ぐい呑
高さ6センチの可愛いぐい呑。もう10年位前になるだろうか。小川文齋先生から頂いたこの猪口。赤い色が気に入っている。紅彩(こうさい)と言う赤は、京焼でも先生独特の色になったそうで、今では私の可愛い宝物だ。



 

市田ひろみ ◆ いちだ ひろみ 
服飾評論家。エッセイスト。大学講師、日本和装師会会長を務める他、市田美容室を経営。民族衣装のコレクターでもあり、世界各地を訪ねている。テレビCMの“お茶のおばさん”としても親しまれACC全日本CMフェスティバル大賞を受賞。

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