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  •  京都迷店案内その壱拾六 しかまファインアーツ(中京区姉小路通冨小路角)

    □京都迷店案内その壱拾六 しかまファインアーツ(中京区姉小路通冨小路角)

    2014-08-312016.22.00
     ふとなぜ今、京都にいるのだろうかと想うことがある。布石は学生時代にあったのかもしれないが、元来はっきりした目標や生き方があるような性格ではなく、流れに身を任せると云えば聞こえはいいが、要はだらしがないのである。高校生の時から8年つきあっていた女の子に、学校の先生になると云って大阪に行ったのに、グラフィックデザイナーになって帰って来たって何? と正月に呼び出されてふられた苦い想い出がある。19歳の私にとっては、大阪での一人暮らしはあまりに刺激的で楽しすぎたのである。早々にドロップアウトするのにはさほど時間はかからなかった。以来気がつけばいつの間にやら30余年が経ち、気がつけばすっかり私は小父さんになってしまっていたのだった。少年老い易く、学成り難し。の言葉を噛み締める。

    2014-08-312016.23.47 京都は民藝の発祥の地だと云っても過言ではない。今から考えると京都の雅な部分と民藝の無骨さのカルチャーギャップはあるものの、初期民藝運動の実践場所となった上賀茂民藝協団の発祥の地であったり、柳宗悦が関東大震災で被災し疎開したのも京都であった。たぶんその10余年が柳の人生の中でも至福の時を過ごしたのが京都ではなかったのではないか。弘法さんや天神さんに出かけていっては襤褸の丹波布や蕎麦猪口などの陶磁器を漁って、河井寛次郎や濱田庄司たちと釣果を競っていたのだった。東京に引き上げる時にはそれがトラック数台分あったというから推して知るべしだ。私はまさにその時代の柳宗悦にとても興味があるのである。もともと民藝は大正から昭和の最先端を行くお洒落なモノだった。暮らしの中に埋もれて見向きもされなかったようなモノに光を当て、そこに美を見い出したのが柳宗悦である。その柳の選んだものをコピーしても、本歌以上のモノができるはずも無く、どんどん劣化してゆきその果てには民芸品に成り果ててしまうのも道理だ。四釜さんのお店にあるモノたちは、初期民藝の良かった部分を掬い取って表現されたモノが多い。私の好きなものに河井寛次郎の李朝写しの祭器がある。本当に白が美しく、本歌の青みがかった白磁とはまた別の魅力に溢れている。残念なのは私の手が届かない値段であることだけである。

    2014-08-312016.24.45 四釜さんと最初にお目にかかったのはいつ、どこでだったか思いだせず、逆にお聞きするとどうやら開店して直ぐの頃にお店に伺っていたようである。四釜さんのお店は骨董屋である。しかも民藝の良品を扱うお店だ。お店の中は、初期の河井寛次郎からバーナード・リーチ、壺屋時代の金城次郎、スリップウエアなど面白いモノがたくさんあり、モノ好きの気持ちをそそる。

    2014-08-312016.25.04 民藝を扱っているといっても、いわゆる民藝店ではなくセレクトショップとして民藝を中心にしたライフスタイルを提案するお店を開いたところに、四釜さんのセンスの素晴しさがあるのではないだろうか。そのせいだと思うが、いつ伺っても素敵な女性のお客さんが多いのも頷けるような気がする。常設の他に、琉球の北窯・松田米司さんの作品展、おなじみとなったリーチ工房展、古いヨーロッパの聖歌譜展など今の暮らしにアクセントになるような展示会も人気の秘訣なのだろう。

    2014-08-312016.25.21 何気なく知り合いになってしまったので、お互いのプライベートな話は聞いたことがなく、会えば民藝や骨董の話やら何やらでいつも2、3時間はあっという間に過ぎてしまう。男の井戸端会議とでも云おうか、与太話をするのが面白いし、私の行ったことのないセント・アイヴスや沖縄の話をお聞きするのもまた楽しい。

    2014-08-312016.27.50 大学を卒業したあとゼミの教授の設計事務所に就職するも、施主さんの意向通りにせざるを得なくなり、図面もプライドもずたずたにされて、これは自分のやりたい仕事ではないと見切りをつけたのが30歳くらいだった。その後、イギリスに留学してオークションで有名なクリスティーズの学校で美術の勉強をしたのも、今から考えると必然であったのかもしれない。骨董趣味はお祖父さん譲りだそうで、子供の頃、よく骨董市や古本屋に連れて行ってもらったという。若い頃からバーナード・リーチやスリップウエアが好きだった。なぜイギリスだったのか、と聞いてみると、逆にイギリスしか想い浮かばなかったというからそれも頷ける話だ。30代の半ばくらいからオークション会社で働くことや、独立をいろいろと模索するも、やはり日本に戻って古美術商として生きる道を選ぶにいたる。相談をした先輩の骨董商からは、いろいろとアドヴァイスをもらいながら、少しづつ自分のやりたいことにフォーカスしてゆくことになる。京都で骨董屋をやろう、それも一番好きな民藝の店を!

    2014-08-312016.33.41 来年はお店を開いて9年目だそうだ。四釜さんの温厚な人柄と、玄人好みの渋い民藝の品々に魅せられた老若男女が今日も集まる。しかしその温厚な人柄の奥にあるのは、好みのはっきりしたこだわりと頑固とも云える激しい情熱が、時として垣間見えるのだ。こういう骨董屋さんはコワいのである、何故ならとんでもないモノを引っ張ってくるからだ。だからお店には行かない、四釜さんとは井戸端会議をするにかぎるのである。

    2014-08-312016.22.22

    しかまファインアーツ

    京都市中京区姉小路通富小路東入ル南側 黄瀬ビル1F

    Tel/Fax : 075-231-4328

    13:00~18:00

    土日のみの営業

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