展覧会紹介|東京ステーションギャラリー

世界を旅するインド更紗。時を超えて愛される文様と色彩の物語

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カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語/東京ステーションギャラリー

白地人物草花文様更紗儀礼用布 17−18世紀頃
南東インド(スリランカで発見と伝わる)、109×155cm
Karun Thakar Collection, London.
Photo by Desmond Brambley

 

 

現在、東京ステーションギャラリーで「カルン・タカール コレクション『インド更紗 世界をめぐる物語』」が開催中です。(〜2025年11月9日)

 

 

展示風景(9/12内覧会にて撮影) カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語/東京ステーションギャラリー

展示風景(9/12 プレス内覧会にて撮影) カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語/東京ステーションギャラリー

 

 

 

インドで生まれた「更紗」

インドで生まれた「更紗」の歴史は古く、紀元前に遡ります。衣服や宗教儀式、室内装飾などさまざまな用途に使われてきました。

 

天然の茜と藍を巧みに用い、染織の難しい木綿布を染め上げて作られる更紗は、のびやかで濃密な文様が特徴です。

 

 

白地チューリップ虫文様更紗裂

《白地チューリップ虫文様更紗裂》1700-30年頃、南東インド海岸部(日本で発見と伝わる) Karun Thakar Collection, London. Photo by Desmond Brambley

 

 

世界へ渡ったインド更紗と発展するデザイン

インド更紗の美しさと染織の驚異的な堅牢性は人々を驚かせ、主要な交易品として世界各地へ渡りました。

 

おそくとも1世紀には東南アジアやアフリカに。17世紀には、ヨーロッパ各地で相次いだ東インド会社の設立に伴い世界中へと輸出され、他国の要望に応じたデザインを自在に展開しつつも、力強いインドの美意識を内包するインド更紗が生まれました。

 

インド更紗は、装飾美術から服飾まで、世界中のあらゆる芸術に多大な影響を与えたのです。

 

 

展示風景(9/12内覧会にて撮影) カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語/東京ステーションギャラリー

展示風景(9/12 プレス内覧会にて撮影) カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語/東京ステーションギャラリー

 

 

 

生命謳歌の樹

中央に立木の模様が描かれたベッドカバーや室内装飾用の布「パランポア」は、インド全土で何百年ものあいだ作られてきましたが、これはヨーロッパ人の好みにあわせた白地のデザインです。パランポアはヒンディー語の「パラン・ポッシュ」、つまり「ベッドカバー」に由来します。ごつごつした岩山に力強く根を張り、大輪の花を咲かせた枝はねじれ、躍動感に満ちています。インドの宮殿やテントを装飾してきた立木モチーフの更紗は、海を越えてヨーロッパの人々の暮らしを彩る装飾品として人気を博しました。

 

 

白地立木形花樹文様更紗掛布(パランポア)

《白地立木形花樹文様更紗掛布(パランポア)》1740-50年頃、南東インド海岸部(スリランカで発見と伝わる) Karun Thakar Collection, London. Photo by Desmond Brambley

 

 

 

日本で愛された“舶来の布”

インド更紗は日本において何世代にもわたって愛されてきました。その記録は、1600年代初頭にまでさかのぼります。“舶来の布”として珍重され、茶道具の仕覆をはじめ、風呂敷や煙草入れ、さらには掛け軸の表装や畳縁にも用いられたほか、ごく小さな端切れでさえ、見本帖に貼られて大切に保存されてきたのです。

 

 

展示風景(9/12内覧会にて撮影) カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語/東京ステーションギャラリー

展示風景(9/12 プレス内覧会にて撮影) カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語/東京ステーションギャラリー ※雑誌『目の眼』2024年12月号でも、松永耳庵が愛蔵し、吉村観阿による次第として紹介しています

 

 

 

カルン・タカール氏について

今回展示されるインド更紗は、世界屈指のコレクターであるカルン・タカール氏のコレクションです。

 

 

カルン・タカール氏によるコレクション紹介(中央)、本展覧会を監修された福岡市美術館館長の岩永悦子氏(右) ※9/12プレス内覧会にて

カルン・タカール氏によるコレクション紹介(中央)、本展覧会を監修された福岡市美術館館長の岩永悦子氏(右) ※9/12プレス内覧会にて

 

タカール氏はインドのデリーで母親の仕立屋を手伝いながら、幼い頃から染織品に親しんできました。家族で英国へ移住後も布や工芸への興味は尽きることなく、1982年からアジアとアフリカの染織品の収集を始め、その活動はやがて世界有数のコレクションを築きます。

 

2021年には英国ヴィクトリア&アルバート博物館と協働でカルン・タカール基金を設立。「私はこのコレクションの束の間の守り人にすぎません」と語るタカール氏は、コレクションを積極的に共有し、英国や米国の美術館で展示されてきました。

 

タカール氏がヨーロッパ、日本、インドネシア、スリランカ、タイで長年にわたって収集してきた14世紀から19世紀にかけての染織コレクションが日本で公開されるのは今回が初めて。この機会にぜひご覧ください。

 

 

Information

カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語

開催中 ~ 2025年11月09日

会場

東京ステーションギャラリー

住所

東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅 丸の内北口 改札前

URL

TEL

03-3212-2485

入場料

一般1,500円、高大生1,300円、中学生以下無料

備考

開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館30分前まで ※金曜日は20時まで開館
休館日:月曜日(ただし9/15、10/13、11/3は開館)、9/16(火)、10/14(火)

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