CHAPTER 5
仕立てのお仕事
─ 和装小物の楽しみ ─

仕立て上がったお着物を受け取り、京の街中にでるとなんだかフワフワと気持ちが浮き立ってきました。幸いにも良いお天気で、時刻はまだお昼過ぎ。「なんだかもう一軒いきたい気分ですね」と言うと、「でしたら和装小物を見に行きましょうか。ステキな帯留や髪飾りを扱う古美術店がありますよ」と、目の眼さんからの提案。

「そういうジャンルにも骨董品があるんですね。見てみたい!」ということで案内していただいたのは高台寺にある「てっさい堂」さん。

ワタシ、ここ知ってます!

長年営む貴道裕子さんは豆皿や帯留のコレクターとしても有名で、各地で企画展もされてて、ずっと行きたいと思ってたお店でした。

「あらあら、いらっしゃいませ!」と笑顔で迎えてくれた貴道さんは雑誌でお見かけした通りの上品なマダムといった雰囲気です。(下左)

「実はいま、お茶事に着ていく色無地を新調したばかりで、今日はこの着物に合う帯留を探しに来たんです」「お着物ってウキウキしますよね。奥の部屋にいろいろあるから一緒に見にいきましょう」と案内されたお部屋にはカワイイ小物があふれんばかりに並べられていました。

「ただね、一般に茶道では、帯留など装身具は身につけないんですよ」

「そうなんですか、マナーなんですね」

「その代わりお食事会とか観劇のときなどは楽しめますよ。帯留なんかは小さいものですけど、実際つけてみると大きく印象が変わります。春夏秋冬、たとえ着物は同じでも、装身具のつけ方、合わせ方で季節感が出せるし、身につける本人の気分も変えてくれます」

↑高台寺店の奥にある和室には和装小物がずらりと並べられてます。帯留・かんざし・櫛・髪飾り・アクセサリーなどあふれんばかり!

「帯にも季節感がありますよね」

「そう、その絵柄や模様と上手に関連づけるとより効果的になります。その取り合わせに遊び心や、その人の好み、知性を反映させることができますよ」

「なんだかお茶道具のときも、同様のお話をきいたような気がします(笑)。すべてつながっているんですね」

そんな話をしながら私が今回選んだのは、花をかたどったかんざしと、色絵磁器の帯留。

↑今回みつけた帯留とかんざしはこちら。どちらも一目惚れでした。

「帯留は富本憲吉さんの作品です。初見で、すぐそれをお手に取るなんてすごいです」と貴道さんも褒めてくれて、赤い組紐をサービスしてくださいました。そのあと店内を見て回るうちに、カワイイ仔犬と眼があって、豆皿もいくつか購入することに。思えばこれが私にとって初めての骨董買いとなりました。

↑ステキな小物がいっぱいで夢中でお買い物をしているうちにカワイイ豆皿もゲット! 自分のおこづかいで買った初めての骨董です。どうですか!?

「ゑり善」と「てっさい堂」。京都に、私にとって大事な場所ができました。

「美の手ほどき」きもの編は、ひとまず今回で最終回となります。春にお茶事が無事できますように!おたのしみに! 「美の手ほどき」きもの編は、ひとまず今回で最終回となります。春にお茶事が無事できますように!おたのしみに!