楽しい絵本・葛飾北斎「富嶽百景」を読む

世界で最も有名な日本人・葛飾北斎の代表作「富嶽百景」を読み解く
江戸時代、空前の大ヒットシリーズとなった『冨嶽三十六景』。なかでも「神奈川沖浪裏」は、約200年後の現代においても世界で最も高い評価を受ける浮世絵です。そして絵本『富嶽百景』全三編は『冨嶽三十六景』と重なる同時代に発刊されました。『富嶽百景』は絵本様式のため、単色でスペースもそれ程広くはありません。しかし、絵本様式でなければ描けない絶妙な富士山の絵が、102画も描かれています。本書『楽しい絵本・富嶽百景を読む』は、これまでの定説に縛られない著者独自の解説を試みています。本書を読めば、北斎がわが国の誇る富士山をどのように受け止めていたのかが、わかるかもしれません。

有泉豊明 著

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信楽の佇まい

土味と釉流しの色香

六古窯のなかでも好む人が多い信楽(しがらき)。他の古窯よりやや遅い鎌倉時代に生まれたとされ、壺や甕、鉢を生産していましたが、15世紀後半に茶の湯の道具として重宝されるようになります。釉薬をかけず、素地を高温で焼く「焼締」の陶器で、赤褐色の火色や焼成された際にできる自然釉の流れ、石ハゼ、焦げなどの見どころが多く、均等ではないスタイルは茶人たちの「侘数奇」の美に通じ、多くの文化人に好まれました。昭和40年代に古窯の一大ブームが起こった時の中心にあり、いまも古美術好きを魅了する信楽の魅力に迫ります。