映画レビュー 配信開始|骨董界の夢とリアルを描いた 映画『餓鬼が笑う』 Others | そのほか 監督・脚本・編集 平波亘出演 田中俊介/山谷花純/片岡礼子/柳英里紗/川瀬陽太/川上なな実/田中泯(特別出演)/萩原聖人 企画・原案・共同脚本 大江戸康 プロデューサー 鈴木徳至製作 大江戸美術/コギトワークス 2021年製作/105分/PG12/日本 配給:ブライトホース・フィルム、コギトワークス 古美術商がつくった骨董映画が完成した、と聞いて試写会を訪れた。試写室に入ると、本誌で何度も取材させていただいた大店のご主人をはじめ、見知った顔がいくつもある。業界関係者の関心も高いようだ。 映画『餓鬼が笑う』は、骨董屋を始めた青年がクセモノばかりの世界で傷つき、苦悩し、満身創痍で日の当たる道を求めるというストーリー。タイムリープや異世界との交錯といった現代的な要素を加味しながらも、終始、往年のATG映画のような疾走感あふれる映像が展開し、105分はあっという間に過ぎた。 この作品は2021年に全国で公開されたが、このたび2月1日から配信サービス各社での配信がスタートする。 画像中央が大江戸康さん 本作の企画・原案・製作を担当し完成に導いたのは大江戸美術代表の大江戸康さん。30歳を過ぎて骨董業界に入り、50歳のころ映画製作を志して、それまで書いたこともない脚本をひそかに書き始めた。以来、古今東西の映画を見倒しながら、何本もの脚本を書き続けているという。 最もこだわったという山中での競りのシーン 「その中から最初に製作に着手した作品が『餓鬼が笑う』なんです。骨董の世界は一般の人からはうかがい知れないと思いますが、入ってみると実にユニークでおもしろい。奇をてらったこの世界の話こそがいいのではないか。成功と失敗は紙一重。「板子一枚下は地獄」という世界は、いま流行りの異世界モノと通じるんじゃないか、と気付きました。だからこそ人生の巻き返しを図る主人公が山中で開催される怪しい競り市に挑むシーンは徹底的にリアルに作りたい、と特に力を入れました。骨董仲間に声をかけて登場する古物はもちろん競り場に詰めかけた古物商役も7割が本職の人たちです。おかげで競りのシーンは相当な迫力が画面にあらわれたと思います。たぶんここまでリアルな古物の競りの映像は映画史上初なんじゃないでしょうか。で、結局競り負けて碌なものが買えなくて車もなくて、夜の山中を彷徨いながら徒歩で帰ったというのも、実は私のリアルな体験談なんですけどね」 と大江戸さんは笑った。 その笑いはまさに作中に登場する古物商(餓鬼)たちの笑いであり、未知の映画の世界に挑戦する不適な笑みだった。 なお配信先は下記の通り。ぜひご覧いただきたい。(視聴料は各社の設定に準じます) YouTube(有料) Amazonプライムビデオ U-NEXT ※SVOD解禁後(夏からの配信予定) Rakuten TV J:COM STREAM ひかりTV Lemino VIDEX.jp クランクイン!ビデオ ムービーフルplus ビデオマーケット music.jp カンテレドーガ FOD WATCHA RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2025年2・3月号No.579 織部のカタチ アバンギャルドな粋 戦国時代に一世を風靡した織部焼。歴史上に生きた人物を後年に名に冠した珍しいやきものです。 大胆な造形と革新的なデザインは多くの人々を魅了し、日本人の美意識を中世から近世へとシフトアップさせました。それから400年、令和の時代となっても織部焼は高い人気を誇っています。今回は伝世の茶道具からうつわ、陶片にいたるまで、多彩な展開を見せた織部を現代に継承し、使いこなす愉しみを紹介します。 試し読み 購入する POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 花あわせ 心惹かれる花は、名もなき雑草なんです Vassels | うつわ 12月開催|オススメ展覧会&企画展情報 Others | そのほか 連載|真繕美 唐津茶碗編 日本一と評される美術古陶磁復元師の妙技1 Ceramics | やきもの 眼の革新 大正時代の朝鮮陶磁ブーム 李朝陶磁を愛した赤星五郎 History & Culture | 歴史・文化 白磁の源泉 中国陶磁の究極形 白磁の歴史(1) Ceramics | やきもの 新刊発売 「まなざしを結ぶ工芸」著者インタビュー 本田慶一郎と骨董と音楽と People & Collections | 人・コレクション 書の宝庫 日本 人の心を映す日本の書 Calligraphy & Paintings | 書画 眼の革新 時代を生きたコレクターたち People & Collections | 人・コレクション 阿蘭陀 魅力のキーワード 阿蘭陀の謎と魅力 Ceramics | やきもの 骨董ことはじめ③ 青磁 漢民族が追い求める理想の質感 History & Culture | 歴史・文化 小さな壺を慈しむ 圡楽窯・福森雅武小壺であそぶ Ceramics | やきもの 古信楽にいける 花あわせ 横川志歩 Vassels | うつわ