唐澤昌宏(国立工芸館館長)・北島輝一(ART FAIR TOKYOマネージングディレクター)

対談|アートマーケットと工芸の力

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左:北島輝一さん(アートフェア東京代表)
右:唐澤昌宏(国立工芸館館長)

 

 

アートマーケットでの工芸の存在感

 

 

画像提供:アートフェア東京

 

 

 

北島 国立工芸館では、アートフェア東京を通じてコレクションしていただいたことがあるそうですね。ありがとうございます。

 

唐澤 アートフェア東京の会場で直接購入したのではありませんが、出展を見たこともきっかけの一つです。現在、公立美術館では購入予算が厳しいのですが、国立工芸館はその時たまたま予算をいただいていたので購入できました。アートフェア東京は、どんな工芸作品を出展されているか毎年欠かさず見にきています。

 

北島 美術館の学芸員など専門の方にアートフェアのような公開された場に来ていただいて、なおかつ購入を検討していただけると、売る側にも買う側にも緊張感が生まれて、次回にはさらにいい作品を出展してもらえるという相乗効果が得られると思うので、主催者側としても非常にありがたいです。唐澤先生は近現代工芸を中心にご覧になっているんですよね。

 

 

 

北島輝一さん(アートフェア東京代表)

北島輝一さん(アートフェア東京代表)

 

 

 

唐澤 そうです。良い作品を見つけるだけでなく、アートフェアを見ることで、工芸が市場でどう動いているのか、コレクターが今何に興味を持っているのかを知りたいと思っています。  ギャラリーを一軒一軒廻るのも大変ですから、一つの会場にドーンと集まってくれると一度に様々な作品を見ることができますし、今の時代にどういう作品が受け入れられているのかを知ることができます。アートフェア東京ではだんだん工芸の領域が増えてきましたね。

 

北島 僕は2012年にアートフェア東京を譲り受けましたが、そもそも最初は今のような古美術や工芸、近代美術、現代美術もあるというフェアではなかったんです。2000年代後半に現代美術が売れ始めたときに、近代美術もそれに乗ろうとしてフェアに参加し始めたのに対して、やはり意見の衝突がありました。工芸についても、その技術に何かアートとしての意味があるのではないかとマーケットで言われ始めたんですが、英語で言うとクラフトとなってしまうので、アートとクラフトを一緒にしていいのかという論議は、実は当時聞いていました。正直、僕はそれについてよくわからなかったんです。ただ、金沢卯辰山工芸工房や多治見市文化工房ギャラリーヴォイスが出展されたりして、そこから展開していって、今では工芸はアートフェア東京の潤滑油のような感じになっていると思います。

 

 

 

金沢卯辰山工芸工房の展示風景
アートフェア東京19(2025年) 画像提供:アートフェア東京
[金沢卯辰山工芸工房は、1989年に金沢市が伝統工芸の継承発展、文化振興のために設立した施設。毎年技術研修者を募集選考している。アートフェア東京には2014年より参加。]

 

 

 

唐澤 日本では「工芸」に対して価値が低いという認識はあまりないと思いますが、海外は大いにありますよね。

 

北島 ファインアートと比べてクラフトを低く評価するギャラリストも結構いますね。

 

唐澤 そうしたことが、アートフェア東京が開催されることで、改めてよくわかるようになった部分もありますし、工芸の評価が高まって、工芸ジャンルのブースが増えてきているのも、我々工芸を専門にする立場からするとしめたものだなと思っています(笑)。

 

 

 

 

工芸作家とアートマーケット

 

北島 唐澤先生は工芸ご専門の眼からみて、今のアートマーケットをどうご覧になりますか?

 

唐澤 そうですね。工芸作家は一人ひとりがとても力がある方が多いんです。工芸はアートマーケットになかなか乗らないところがありますが、力がある人たちが多数入っている研修所や工房はしっかり乗っていけてるように思います。でも最近、この2、3年はまだ研修中の作家の青田買いのようなところがあって、それはとても気になりますね。

 

北島 売り出す前にもう少し時間をかけた方がいいということでしょうか。

 

唐澤 時間をかけた方がいいですし、アートマーケットで見せるということは、展覧会で単に発表するのとは違うところがありますから、売れる作品とは何かを考えて作っていくことになります。作家もギャラリストも、売れる作品に対する反応、動きがちょっと露骨になりますよね。大学を卒業したり研修所を修了したりしてからであれば、ある程度ベースはできていると思いますが、それでも社会に出て行く作品を発表して、独り立ちしていくことを考えると、卒業制作で評価されたこととアートフェアで評価されたこととの違いは何だろうかとか、そういう点を踏まえて今後自分はどういう風に制作して発表していこうとか、一呼吸置いて、考える期間があってもいいんじゃないか、そうあって欲しいなと思うんです。

 

 

 

唐澤昌宏さん(国立工芸館館長)

 

 

 

北島 実は僕もそう思います。平面や立体の作家も同様ですが、工芸作家も研修所で学んでいる間にアートフェアに出展したりすると、スタート地点から高いハードルを作ることにならないかと。ただ、立体や平面の作家が個人としてゼロからのスタートなのに対して、工芸作家は伝統技法の蓄積や人間国宝クラスの作家から直接学ぶことができますよね。この間、輪島で伺ったお話なのですが、以前は漆器が使われなくなって漆芸家になる人が少なかったのが、最近は若い人に芸術表現として人気が高まっているそうです。ただし重箱を塗るとかではなくて、乾漆で創作をする作家が多いという偏りもあるらしくて、これまで大切とされていた技法に関心が持たれていない。こういった工芸とアートの違いというか、機能や技術を高めるのとは違う方向に工芸を学ぶ若い人が行こうとしていることも合わせて、もっとこれから議論があってもいいのではないかと思いますね。

 

 

 

 

****** 続く ******

 

 

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Information

アートフェア東京20

2026年03月13日 ~ 2026年03月15日

会場

東京国際フォーラムB2F ホールE/B1F ロビーギャラリー

住所

アクセス:JR線 有楽町駅より徒歩1分

URL

入場料

要問合せ

備考

◆プライベートビュー 招待制 3⽉12⽇(⽊) 11:00 - 19:00
◆パブリックビュー
 3⽉13⽇(⾦) 11:00 - 19:00
 3⽉14日(⼟) 11:00 - 19:00
 3⽉15⽇(⽇) 11:00 - 17:00
 入場は閉場30分前まで

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