秋元雅史(美術評論家)x 北島輝一(ART FAIR TOKYOマネージングディレクター) スペシャル対談|アートフェア東京19の意義と期待 People & Collections | 人・コレクション アート業界とアートフェア 秋元 北島さんは、こうしてお話するようになる前は、もっとビジネスよりの感覚の方かと思っていました。意外にと言っては失礼ですが、情熱的ですよね(笑) 北島 そうですね(笑)。私は証券会社のトレーダーを11年やっていまして、その頃は数字だけを追っていたんです。金融市場は売り買いの動向を「強気」とか「弱気」、「気配」といいますよね。データを判断基準にしていますが、結局、買うか買わないかを判断する瞬間は気分なんです。アート業界で、自分の好みと市場での評価との違いを客観的に見て、買う瞬間に判断するというのが、自分がトレーディグで訓練してきた馴染みのある懐かしい感覚だと思いました。私は2012年9月にアートフェア東京に入って、すぐに12月のアート・バーゼル・マイアミビーチを見に行ったんですが、海外では、アートがオルタナティブ資産になっていることが分かりました。一方で、日本は全くそういう雰囲気になっていないことも分かりましたが、日本はゆっくりでも海外をキャッチアップしていく国だと思うので、長い目で見たら可能性はあると感じたんです。 秋元 でも今もあまり変わってないですよね。 北島 確かに思ったより時間がかかるなと思っています。それは、怒られるかもしれませんが、美術大学や美術館の問題もあるかなと思うんです。日本では、そういう機関はお金のことに触れたがらないところがありますよね。 秋元 ありますね。私はベネッセに入ってアート事業に携わったので、会社が損をしてはいけないと、当時は本当にマーケットを見ていました。でも公立美術館に勤めてからは全く見なくなりました。税金が使われているということもあって、公的なところは作品の金銭的価値が上がったとか下がったとかいうマインドには行きにくいんです。マーケットともつながりを持つアメリカ型の美術館運営、もしくはそれに準ずるようなアートサイトみたいなものを作って、アート業界を育成していかないと、日本と世界の距離は縮まらないでしょうね。 北島 私も全く同感です。海外は美術的な評価と価格を一致させる努力をすごくしていますし、そうしないといけないと思います。そういう意味で、アートフェアは、アートの価値を高める場と考えてもらえたらと思います。最近ではアートフェアはギャラリーが集まって、ただ自分勝手に売っているのではないと知っていただけるようになってきた気がします。 秋元 それはビジネス的に成功しているからこそですね。こう言ってはなんですが、長く続けることで見直されたと思います。 北島 ありがとうございます。アートフェア東京は2005年に始まって19回目です。前身のNICAF(国際コンテンポラリーアートフェア)からですと28年になります。 秋元 マイナス要因と言われた欧米のような強いトレンドがない点も、出展ギャラリーがそれぞれのリアリティの中でやって、お客さんも自分の好みで選んでいるので、ある意味フラットで民主的になって、逆に成功要因になっているんじゃないですか。 北島 今のお話を聞いて、本当に続けていてよかったと思います。民主的にやることで、お客様が自分なりによいと思う作品を選んで、ギャラリストもそれに応えて出展したら、アダム・スミスの「神の見えざる手」ではないですが、ちゃんと選び出されるという状況ができるのがアートマーケットであり、アートフェアではないでしょうか。アートフェア東京はお客様に支持されているギャラリーに出展していただいていますし、それがうまく機能していると思います。 現代アートと古美術の相互作用 秋元 私は今、フリーで活動しているので、実際にアートを買う方と一緒に見て廻ったりしています。・・・ ・・・ ****** 続く ****** 記事の後半は、『目の眼』電子増刊第2号でご覧いただけます。 ▷ 目の眼倶楽部有料デジタルプランのお申込はオンラインストアへ。 ▷ デジタルプラン(目の眼デジタル読み放題サービス)をご利用中の方は、読み放題サービスへログインして増刊号をご覧ください。 ▷ 電子増刊第2号は、Amazon kindle、hontoでも単号購入いただけます。 ◆アートフェア東京の出展ギャラリーズの中から、骨董・古美術好きにおすすめ 藤アート/銀座 黒田陶苑/ギャラリーハタ Bros./平野古陶軒/ギャラリー北欧器/宝満堂/一柳堂・柳井/ギャラリーこちゅうきょ/寿屋/繭山龍泉堂/水戸忠交易/古美術奈々八/RYUSENDO GALLERY/提物屋/三渓洞/思文閣/しぶや黑田陶苑/角匠/瀧屋美術/古美術鼎/Gallery Togeisha/ときの忘れもの/浦上蒼穹堂/ギャラリーうつわ菜の花/渡邊三方堂/柳ヶ瀬画廊 『目の眼』電子増刊第2号 Information アートフェア東京19 名称 アートフェア東京19 会期 パブリック・ビューイング 2025.3月7日(金)〜3月9日(日) 会場 20250723 住所 東京都千代田区丸の内3-5-1 URL https://artfairtokyo.com/ TEL 03-3271-1835 RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2025年8・9月号No.582 古美術をまもる、愛でる 日本の古美術には、その品物にふさわしい箱や仕覆などを作る文化があります。 近年では、そうした日本の伝統が海外でも注目されるようになってきましたが、箱や台などをつくる上手な指物師、技術者は少なくなっています。 そこで今回は、古美術をまもる重要なアイテムである箱・台などに注目して、数寄者のこだわりと制作者たちの工夫をご紹介します。 試し読み 購入する POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 藤田傳三郎、激動の時代を駆け抜けた実業家の挑戦〈後編〉 People & Collections | 人・コレクション トピックス|刀剣文化の応援はじまる 「刀剣乱舞」の生みの親 ニトロプラスが刀剣文化の調査・研究に助成 Armors & Swords | 武具・刀剣 加藤亮太郎さんと美濃を歩く 古窯をめぐり 古陶を見る Ceramics | やきもの 展覧会レポート|泉屋博古館東京 “物語(ナラティブ)”から読み解く青銅器の世界 Others | そのほか 大豆と暮らす#4 骨董のうつわに涼を求めて ー 豆花と冷奴 Others | そのほか 昭和時代の鑑賞陶磁ブーム 新たなジャンルを作った愛陶家たち People & Collections | 人・コレクション 大豆と暮らす#2 うなぎもどき|日本人と大豆の長い付き合いが生んだ「もどき料理」 Others | そのほか 東京アート アンティーク レポート#2 いざ美術店へ |「美術解説するぞー」と行く! 鑑賞ツアー レポート Others | そのほか ビンスキを語る ビンスキは どこからきたのか 〜その美意識の起源を辿る History & Culture | 歴史・文化 骨董ことはじめ③ 青磁 漢民族が追い求める理想の質感 History & Culture | 歴史・文化 骨董ことはじめ⑤ 明治工芸という世界|清水三年坂美術館・村田理如コレクション People & Collections | 人・コレクション 骨董・古美術品との豊かなつきあい方② 自分だけのコレクション、骨董品との別れ方「終活」編 Others | そのほか