百済から近代まで 歴史の宝庫、韓国・忠清南道(チュンチョンナムド)

忠清南道の歴史文化遺産を守るために

 

韓国の中部に位置する忠清南道(チュンチョンナムド)は、ソウルからバスで約2時間半とアクセスも良く、実は歴史好きにはたまらない魅力が詰まった場所です。

 

「愛の不時着」など人気韓国ドラマのロケ地としても有名ですが、それだけじゃない! 古代の百済王国に始まり、馬韓、高麗、朝鮮時代、そして近代の独立運動まで、数々の歴史舞台となってきた土地です。

 

ただ、近現代の混乱期には、たくさんの大切な文化財が海外へ流出するという悲しい歴史も抱えています。そんな中で今、忠清南道では、散り散りになった貴重な文化遺産を取り戻すための熱い取り組みが行われています。

 

 

 

百済 金銅大香炉(写真出典 | 国立中央博物館 eミュージアム)

 

 

 

百済 武寧王陵出土 環頭大刀(写真出典 | 国立中央博物館 eミュージアム)

 

 

 

忘れ去られた歴史を呼び戻す! 忠清南道の挑戦

 

文化遺産の調査や還収活動の中心を担っているのが、現地にある忠清南道歴史文化研究院です。

 

研究院は、忠清地域の文化遺産に関する研究・展示・教育だけでなく、国内外に散在する忠清南道関連の文化財を調査し、その価値を明らかにし、寄贈・寄託・購入などの方法で文化財の保存と還収を推進しています。

 

特に、個人が所蔵している文化財であっても、単なる収集品としてではなく、歴史的な背景にもとづいてその価値を再評価し、所有者と協議のうえ公共文化遺産として保存・活用できるよう支援しています。

 

これまで還収した代表的なものには、朝鮮後期の武官・李基夏(イ・ギハ)将軍の生涯を記録した「白磁青花 李基夏 墓誌」があります。

 

 

白磁青花 李基夏 墓誌

 

 

1994年に紛失したこの墓誌は、アメリカのクリーブランド美術館に所蔵されていましたが、忠南 礼山(イェサン)の子孫と海外所在文化財財団、クリーブランド美術館の協力により、2022年に忠清南道へ戻ってきました。

 

この一連の流れは、文化財返還の理想的なモデルケースとされ、以降、忠清南道とクリーブランド美術館との間で文化・芸術分野の交流と協力が続いています。

 

 

忠清南道と米国クリーブランド美術館の業務協約締結

 

 

 

グロバルな協力の拡がり

 

忠清南道歴史文化研究院の活動は海外にも拡がっています。アメリカ・ロサンゼルスでは、在米韓国人社会と連携し、アメリカ国内にある忠清南道関連文化財の保護と還収を目的とした官民協力ネットワークを構築しました。

 

この協力関係を通じて、在米韓国人の方々と共に、所蔵されている文化財の価値を確認したり、情報を共有し、還収協力を段階的に拡大しています。忠清南道歴史文化研究院は、文化遺産を「発掘し、守り、未来へ伝える」ことを使命とし、国境を越えた文化交流と協力の架け橋となることを目指しています。

 

この記事を読んでくださっている皆さんの周りに、忠清南道に関わる文化財や資料があるという方がいらっしゃいましたら、一度、忠清南道歴史文化研究院に連絡してみてはいかがでしょう。専門の研究者たちがその真価を調査し、寄贈や寄託、購入などを通じて、文化遺産として適切に保存・活用できるよう案内してくれるはずです。

 

あなたの小さな関心が、失われかけた歴史を未来へとつなぐ、大切な一歩になるかもしれません。

 

 

■ お問い合わせ | 忠清南道歴史文化研究院 交流協力部

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