大嶽有一 鉄彫刻展 企画展|SHINYA Japanese Art & Design, ARTS&SCIENCE Aoyama 鉄の彫刻家・大嶽有一さんの個展が、京都の美術店SHINYAと東京のARTS&SCIENCE青山で開催される。 大嶽有一さんは鉄を繊細な技術で造形する作家である。鉄板を自在に加工溶接することで、シンプルでシャープな理想のフォルムを追求。さらに作品を野外に置いて腐食させ、時間をかけて黒く均一な錆をつける。その美しい表情は自然の中で存在する鉄本来の落ち着きを私たちに見せてくれているようだ。そして、自然とは相対するモダンなフォルムが、見た者の記憶に強く残る。 大嶽有一さん ART FAIR TOKYO2023 展示会場にて 長年、鉄の美を突き詰めてきた大嶽有一さん独特の作品は、これまで多くの美術愛好家を魅了してきた。作品は国内外の美術館に収蔵され、日本各地をはじめ、スイスやパリのギャラリーでも個展が開催されている。 なかでも、京都の古美術街・大和大路通りにあるSHINYAでは、2009年から数年ごとに個展を開催し、大嶽ファンを増やしている。SHINYAは大正・昭和から現代まで、店主の奥西真也さんの眼で選んだ作家作品を扱い、古美術、近代美術、現代アートの枠にとらわれない面白いラインナップから、その活動範囲を広げている。奥西さんは大嶽さんの「鉄」に出会ってから15年以上、その作品を注目し続けてきた。昨年はアートフェア東京(2023年3月10日〜12日 東京国際フォーラム)に出展し、大嶽有一さんの2019年から2022年に制作された作品を出展し、高い評価を得た。 ART FAIR TOKYO2023 “Yuichi OTAKE Sculpture of Iron”での展示風景 そして今秋は、京都と東京の同時開催が実現した。 ARTS&SCIENCEは、日本の手仕事、工芸に関心が高いことで知られるソニア パークさんが代表を務め、東京をはじめ、鎌倉、京都、福岡に展開している人気のブランド兼セレクトショップ。ARTS&SCIENCE青山はウィメンズアイテムの旗艦店で、2023年にリニューアルオープンしたばかりだ。リニューアルを機に、A&Sが紹介したいと考える様々な分野のアーティスト作品を、服やジュエリーと同じ空間に展示する企画が構想され、店内の雰囲気に調和することから大嶽有一作品を展示しており、今回の展覧会に結びついた。 展覧会では、服や靴、バッグやジュエリーが並ぶ店内全体の様々な場所に大嶽作品を設置する予定だという。美しさと機能性のバランスを大切にするA&Sのラインナップと今回展示される大嶽有一さんの新作が相乗効果を生みそうで興味深い。特に2階は絨毯がひかれ、ソファが置かれたリビングのような雰囲気があり、ギャラリー空間とはまた違ったイメージの大嶽作品が見られるだろう。 一方、15年以上にわたり個展を開催しているSHINYAでは、新作を心待ちしているファンのために、インターネットでの発表は10月26日SHINYAでの個展オープンと同時にするという。店主の奥西さんは、着実で急がない制作ペースを崩さない大嶽有一さんとともに、発表数を増やさず一点一点の作品を大切にしている。今回も繊細な鉄との対話を終えた大嶽さんの自信作が見られるに違いない。 大嶽有一さんは、10月12日に東京・ARTS&SCIENCE、10月26日と11月3日に京都・SHINYAに在廊するそうだ。 ぜひ東京・京都のそれぞれに見応えのある大嶽有一展に足を運んでみよう。 大嶽有一 PROFILE 1949年岐阜県多治見市生まれ。1970年名古屋造形芸術短期大学彫塑科卒業、専攻科に在籍。1972年よりスイス・ジュネーヴに滞在。陶芸家Claude、彫刻家Henri PRESSET夫妻と出会う。1975年に銅版画工房で指導を受け制作を始める。1977年にジュネーヴ州立美術学校彫刻科、同専攻科、版画科を卒業。銅版画制作に専念。1980年に帰国し、多治見にて鉄彫刻の制作を行う。2009年より隔年で京都の古美術商SHNYAにて個展を開催。2016年パリのMINGEIにて個展。2020年第10回円空賞受賞。2023年アートフェア東京にて個展開催。 ◇ 京都 SHINYA Japanese Art & Design 2024年10月26日(土)– 11月9日(土)10:00 – 19:00 会期中無休 *大嶽有一さんは10月26日、11月3日在廊 京都市東山区大和大路通古門前下ル元町375-3 Tel/Fax 075-541-3113 京都市営地下鉄東西線三条京阪駅・京阪線三条駅より徒歩2分 https://shinya-art.com/?page_id=215#12 ◇ 東京 ARTS&SCIENCE Aoyama 2024年10月11日(金)– 12月29日(日)11:00 – 19:00 火曜定休 *大嶽有一さんは10月12日14:00 –18:00在店 東京都港区南青山4-23-11 1F Tel 03-3498-1091 東京メトロ 表参道駅より徒歩5分 https://arts-science.com/events/yuichiotake24/ RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2024年10月号No.577 李朝空間 癒やしのかたち 日本とは文化的に近しく、かつ異なる美を持つ李朝のやきものや絵画、道具や家具は、古くから日本の蒐集家に愛されてきました。近年は韓流ドラマが定着して、李朝時代の歴史に興味を持つ方も多く、李朝時代の骨董は新しいファンを増やしています。今回の特集では李朝の古美術を用いた心地良い空間の愉しみをご紹介します。 試し読み 購入する POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 源氏モノ語り 秘色青磁は日本に来たか Ceramics | やきもの ビンスキを語る ビンスキは どこからきたのか 〜その美意識の起源を辿る History & Culture | 歴史・文化 連載|真繕美 唐津茶碗編 日本一と評される美術古陶磁復元師の妙技1 Ceramics | やきもの 連載|真繕美 古唐津の枇杷色をつくる – 唐津茶碗編 2 Ceramics | やきもの 超 ! 日本刀入門Ⅱ|産地や時代がわかれば、刀の個性がわかります Armors & Swords | 武具・刀剣 新刊発売 「まなざしを結ぶ工芸」著者インタビュー 本田慶一郎と骨董と音楽と People & Collections | 人・コレクション アンティーク&オールド グラスの愉しみ 肩肘張らず愉しめるオールド・バカラとラリック Vassels | うつわ 根付 怪力乱神を語る 掌の〝吉祥〟を読み解く根付にこめられた想い Ornaments | 装飾・調度品 骨董の多い料理店 目利きの京料理人|ごだん宮ざわ Vassels | うつわ 夏酒器 勝見充男の夏を愉しむ酒器 Vassels | うつわ 最も鑑定がむずかしい文房四宝の見方 硯の最高峰 端渓の世界をみる People & Collections | 人・コレクション 小さな壺を慈しむ 圡楽窯・福森雅武小壺であそぶ Ceramics | やきもの