展覧会紹介|福本潮子ー藍の海ー 海のように藍が染まる〜福本潮子の世界を堪能する個展、銀座和光にて NEWS 《交差する青‐1》 亜麻(あま) 220×200㎝ 深遠な藍染めの表現を探求し、世界的に活躍する福本潮子さんの銀座和光で初めての展覧会「福本潮子 ー藍の海ー」が2025年11月27日〜12月7日の会期で開催される。 《藍の海》 木綿漁網 100×600㎝ 約50年前の「木綿漁網」を藍で染めた作品《藍色の海》はグラデーションが美しく、深い透明感のある日本の藍の色で、プラスチックゴミを知らなかった海をイメージしている。今回、ギャラリーに展示する漁網は合わせて約250mになる。 《対馬‐Ⅻ》 大麻・木綿 223×92㎝ 対馬は玄界灘の荒海にある石の島である。その厳しい風土の中で人は大麻、綿を植え対馬麻と言われる布を織り、家族の着物を作った。山ぎもんと言われるこの着物は山の仕事着で村、村で織り方が違う。対馬麻は大麻に少しの綿を加えた独特の布で見分けがつく。しっかりとした対馬麻からは対馬の風土、生活ぶりをも感じることができる。着物のおくみの三角の所だけを赤い藍色で染めることで玄界灘を感じさせ、あとは布から滲み出る強い存在感に任せた。 福本さんは、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)で西洋画を学ぶうちに伝統美術に目覚め、日本の伝統美を学ぶために龍村織物美術の門をたたき、染めを修業したという。以来、80年代から藍染の技法を用いて、多くの作品を発表。世界的に高い評価を受け、過去の展覧会図録はプレミアがつくほどの人気ぶりだ。 『目の眼』でもかつて、「京の花合せ」という連載で、福本さんの仕事場を訪れ、作品を紹介している。 『目の眼』 2021年5月号「京の花合せ」より 福本さんのユニークなところは伝統工芸と現代アートを自在に行き来している軽やかさにある。古来より伝わる藍染と向き合い、着物や帯の製作といった職人的な仕事も続ける一方、日本各地の地機(じはた:原初的な手織り機)を使って、 麻布、綿布、トルファン綿、パイナップル布、紙布など多種多様な天然素材に藍染を施し、その風土や歴史に根ざした作品を織り上げる。 福本潮子 -藍の海- パンフレットより ******** 福本潮子は「世界中の藍で一番美しい藍は日本の藍です。その特色は、ブルーの豊かなグラデーションです」という。彼女は、古来より伝わる藍染の技法と向き合いながら、伝統の枠を超えた自由な創作に挑戦している。その挑戦は、藍がより美しく鮮やかに染まる開田高原の苧(ちょ)麻(ま)に始まり、中国のトルファンの超長繊維綿との出合い、滋賀県湖北の長浜で織られた麻の蚊帳地などで大きなインスタレーショウンにも挑戦してきた。しかし、それらの全てが製造中止になった。その後、日本各地の地機(じはた)で織られた大麻、藤、反故紙(ほごし)、シナ、オヒョウなどで作られた仕事着や半纏(はんてん)、蚊帳地などの布に深く刻まれた風土、労働、日本人気質などを作品へと昇華させる。いま挑戦しているのが木綿の漁網、昔は自然素材の麻や木綿などで漁網が作られていた。しかし、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維で作られるようになり、世界中の海が汚染され出した。藍は自然素材しか染まらない。福本は「木綿の漁網は美しい海のように藍が染まる」と訴える。布に込められたさまざまな言葉を聞き出し、それをいかに現代作品として発することが出来るかを志向しながら制作している。 本展を監修した美術評論家・森孝一氏の紹介文にあるように、福本さんの作品は藍染という伝統工芸の延長線にありつつ、その過去・現在・未来を見通したような厳しさや問題点など、美しさを超えたアート作品としてあらわれているところが見どころだ。 この機会に、藍染が語る美しさとメッセージにふれていただきたい。 Information 福本潮子 ー藍の海ー 2025年11月27日 ~ 2025年12月07日 会場 セイコーハウスホール(主催:和光) 住所 東京都中央区銀座4-5-11 セイコーハウス 6階 TEL 03-3562-2111(代表) 入場料 無料 備考 営業時間:11:00~19:00(最終日は17:00まで) ※無休 作家在廊予定日:11月27日(木)、29日(土)、30日(日)、12月6日(土)、7日(日) RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼 電子増刊第6号 残欠 仏教美術のたからもの デジタル月額読み放題サービス 今特集では仏教美術の残欠を特集。 残欠という言葉は、骨董好きの間ではよく聞く言葉ですが、一般的にはあまり使われないと思います。ですが、骨董古美術には完品ではないものが多々あります。また、仏教美術ではとくに残欠という言葉が使われるようです。 「味わい深い、美しさがあるからこそ、残欠でも好き」、「残欠だから好き」 残欠という響きは実にしっくりくる、残ったものの姿を想像させます。そこで今回は、残った部分、残欠から想像される仏教美術のたからものをご紹介します。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 骨董の多い料理店 進化しつづける「獨歩」の料理と織部の競演 Ceramics | やきもの 大豆と暮らす#1 受け継がれる大豆と出逢い、豆腐屋を開業 稲村香菜Others | そのほか 骨董ことはじめ① 骨董と古美術はどう違う? History & Culture | 歴史・文化Others | そのほか 『目の眼』リレー連載|美の仕事 橋本麻里さんが訪ねる「美の仕事」 大陸文化の網の目〈神 ひと ケモノ〉 橋本麻里People & Collections | 人・コレクション 展覧会情報|大英博物館 ロンドン・大英博物館で初の広重展。代表作「東海道五十三次」など 山田ルーナCalligraphy & Paintings | 書画 東京アート アンティーク レポート #1 3人のアーティストが美術・工芸の継承と発展を語らう Others | そのほか 骨董ことはじめ③ 青磁 漢民族が追い求める理想の質感 History & Culture | 歴史・文化 世界の古いものを訪ねて#7 アラビア〈バレンシア〉の絵付けにみる、北欧デザインと生活。 山田ルーナVassels | うつわ 展覧会紹介|茨城県陶芸美術館 余技の美学〜近代数寄者の書と絵画 Calligraphy & Paintings | 書画 新しい年の李朝 李朝の正月 青柳恵介 青柳恵介People & Collections | 人・コレクション 茶の湯にも取り入れられた欧州陶磁器 阿蘭陀と京阿蘭陀 Ceramics | やきもの 眼の革新 大正時代の朝鮮陶磁ブーム 李朝陶磁を愛した赤星五郎 History & Culture | 歴史・文化