余技の美学〜近代数寄者の書と絵画 RECOMMEND 原三溪 「白猫」(部分) 1934年 絹本着色 前期展示 原三溪 「白猫」 1934年 絹本着色 前期展示 幕臣の子として育ち10代で遣欧使節団の一員としてヨーロッパを遊学、明治維新後は大蔵省で新政府の財政を支え、のちに三井物産の大番頭として日本経済界を牽引した益田鈍翁。生糸貿易と製糸業界で巨万の富を得て、早くから美術コレクター、茶人として活躍し近代数寄者の中心人物となった原三渓。九州で電力事業に関わり、日本の電力業界の発展に尽くし「電力の鬼」と呼ばれた松永耳庵。 『目の眼』でこれまで何度となく紹介してきたように、激動の時代にそれぞれの世界で大きな成功をおさめた彼らをつないだのが茶の湯だった。そして実業の世界で鎬を削り独自の美学を築き上げた彼らは、単に旧来の茶を模倣するだけではなく、新しい茶と美の世界を拓いたことでも知られている。 茨城県陶芸美術館では現在、明治から昭和にかけて活躍した近代数寄者のなかでも中心人物であったこの3人が自ら筆を執って描き上げた貴重な書画作品49点(前期24点、後期25点)を紹介するという興味深い企画展を開催中。豪放で大胆、時に大らかで品格のあるその作風からは、偉大な実業人の胆力や、美術文化への敬愛の念が感じられるという。 稀代の数寄者3名の美学とあそびごころを体感してほしい。 原三溪 「白蓮図」 1933年 絹本着色 原三溪 「白鳩」 1931年 絹本着色 後期展示 原三溪 「みみづく」 1934年 紙本墨画 後期展示 益田鈍翁 「清風満地」 1936年 紙本墨画 前期展示 松永耳庵 「穆山妓女之図」 1958年 紙本墨画 後期展示 原三溪筆 「益田鈍翁宛書簡」 制作年不詳 紙本墨書 前期展示 Information 関彰商事コレクション 近代数寄者の書と絵画 原三溪・松永耳庵・益田鈍翁の美意識 開催中 ~ 2025年11月03日 会場 茨城県陶芸美術館 2階 第2展示室 住所 茨城県笠間市笠間2345 URL http://www.tougei.museum.ibk.ed.jp/ TEL 0296-70-0011 入場料 一般360円、満70歳以上180円、高校生等290円、小中学生180円ほか 備考 9:30~17:00(入場は16:30まで) 9/28(日)、11/2(日)は、関彰商事プレゼンツ 1日無料dayで無料で観覧可。 RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2025年10・11月号No.583 名古屋刀剣博物館 サムライコレクション 2024年に新しくオープンした名古屋刀剣博物館(名古屋刀剣ワールド)。 東建コーポレーション蒐集の500振を超える刀剣のほか、甲冑や刀装具、武具など、武将をテーマにした絵画など、貴重な資料群を所蔵。それらをできるだけわかりやすく紹介したいと様々な工夫が施された展示も見どころとなっている。今回は、本誌刀剣ファンのために同館の見どころや貴重な作品をご紹介。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 リレー連載「美の仕事」|澤田瞳子 澤田瞳子さんが選んだ古伊万里 澤田瞳子Ceramics | やきもの 夏酒器 勝見充男の夏を愉しむ酒器 Vassels | うつわ 小さな煎茶会であそぶ 自分で愉しむために茶を淹れる 佃梓央前﨑信也History & Culture | 歴史・文化 東京アート アンティーク レポート #4 街がアート一色に|美術店めぐりで東京の街を楽しもう Others | そのほか 世界の古いものを訪ねて#3 ケルン大聖堂 響きあう過去と現在 ー 632年の時を超え、未来へ続く祈りの建築 山田ルーナHistory & Culture | 歴史・文化 Book Review 会津に生きた陶芸家の作品世界 Others | そのほか 加藤亮太郎さんと美濃を歩く 古窯をめぐり 古陶を見る Ceramics | やきもの 夏休みにおすすめ! 古代ガラスの展覧会 Ornaments | 装飾・調度品 骨董ことはじめ② めでたさでまもる 吉祥文に込められたもの History & Culture | 歴史・文化 骨董ことはじめ⑧ 物語と笑いに満ちた江戸文化を楽しむ、ゆたかなる春画の世界 Calligraphy & Paintings | 書画 連載|辻村史朗(陶芸家)・永松仁美(昂KYOTO) 辻村史朗さんに “酒場”で 学ぶ 名碗の勘どころ「井戸茶碗」(後編) Ceramics | やきもの 古信楽にいける 花あわせ 横川志歩 Vassels | うつわ