文様とデザイン文様が魅了する インドネシアの染織の美 展覧会紹介|福岡市美術館 一人のコレクターの審美眼を通して知る、インドネシアの豊饒な染織文化 布や染織は、古くから多くの人を魅了してきました。民藝の提唱者、柳宗悦も「民衆が日々の生活に必要とする品」としての「健全な美しさ」を感じ取り、さまざまな織物を収集していました。布や染織は、実用だけでなく、人を飾るという美意識への知恵と工夫が詰まった手仕事の集大成といえます。布や染織に魅せられた世界中のコレクターが集めた収集品は、いまや美術品として多くの美術館や博物館に納められています。 仕事で香港に赴任した一杉秀樹氏も染織の魅力に引き込まれたひとり。アジアの文物が集約する香港でインドネシアの布と出会い、その美しさに魅了されました。2024年、長年にわたり集めてきたコレクションを福岡市美術館に寄贈。現在美術館では、氏のコレクション85点を紹介する企画展が開催されています。 [企画展「一杉コレクション展―魅惑のインドネシア染織―」 開催中〜2026年3月15日まで] 《孔雀花唐草文様更紗腰布》 ジャワ島・北岸地域 蝋と糸が描く精緻な意匠 展示では一杉氏がとくに関心を寄せて集めたジャワ島のバティックやスマトラ島の緯絣を多数紹介しています。 インドネシアの染織のなかでも世界的に名高いのが、ジャワ島で伝統的に作られてきたろうけつ染めのバティック(ジャワ更紗)です。木綿の生地に溶かした蝋で文様を描き、染料を重ねて染めた最後に落とした蝋の部分が白く残る技法で、インド更紗の技法が8世紀頃に伝わり、17世紀頃にはインドネシア各地で作られるようになったといわれています。特にジャワ島北岸地域で作られた《孔雀花唐草文様更紗腰布》や《花鳥文様更紗腰布》などは、布を覆い尽くすほどの文様が極めて緻密に施されており、手仕事の極致を見ることができます 。 《花鳥文様更紗腰布》ジャワ島・北岸地域 全体 《花鳥文様更紗腰布》ジャワ島・北岸地域 部分図 また、バリ島の緯経絣(グリンシン)やジャワ島以東の島々の絣、絞染なども展示され、インドネシアの島々の風土や文化の違いが、多様な染織を生んだことがわかる構成となっています。 《鋸歯文様緯絣肩掛》スマトラ島・バンカ=ブリトゥン州 全体 《鋸歯文様緯絣肩掛》スマトラ島・バンカ=ブリトゥン州 部分図 企画展を通して、インドネシアという多島海が育んだ染めと織りの卓越した技法をじっくりとご覧いいただけます。布の表面を埋め尽くす緻密な文様は、一見すると機械的な正確さを持ちながらも、その地で生活してきた人々が時間をかけて手で作り上げたものだけが放つ、静謐な気配を感じとることができるのではないでしょうか。 インドネシア染織の美と歴史を知る、岩永館長による講座が1月17日に開催 1月17日には、美術館館長の岩永悦子さんによる講座「インドネシアの染織 一杉コレクションの名品を語る」も開催されます。島ごとにある特色ある作品を生み出してきたインドネシアの染織について、展示品を中心にその魅力を紹介する内容となっています。講座は聴講無料、事前申込不要の先着順となりますので、当日の展覧会鑑賞とあわせてご参加ください。 Information 一杉コレクション展―魅惑のインドネシア染織― 開催中 ~ 2026年03月15日 会場 福岡市美術館 住所 福岡市中央区大濠公園1-6 URL https://www.fukuoka-art-museum.jp/ TEL 092-714-6051 入場料 一般 200 円、高大生 150 円、中学生以下無料 備考 開館時間:午前 9時30分~午後5時30分(入館は閉館30分前まで) 休館日:毎週月曜日、1月13日(火)、2月24日(火) ※1月12日(月・祝)、2月23日(月・祝)は開館 RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2026年2・3月号No.585 須恵器 世界を変えたやきもの SUEKI Change the World これまでにない大規模な須恵器の展覧会が、愛知県陶磁美術館から、兵庫、山口、東京と巡回します。 古墳時代に大陸から渡ってきた窯焼の技術によって、それまで日本になかった硬質のやきものが作られるようになりました。日本最大のイノベーションといわれる須恵器の誕生です。約30年ぶりという本格的な須恵器の展覧会を機会に、コレクターによる須恵器の愛玩の変遷もみながら、ご紹介します。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 展覧会紹介|田端文士村記念館 「書画骨董は非常に好きだ」芥川龍之介の骨董 People & Collections | 人・コレクション 古美術をまもる、愛でる 生糸染めから手機織りで受け継がれる、真田紐師 江南の唯一無二 Others | そのほか オークション情報|雅寳(GAVEL) 11/15、随代白磁碗6品が揃う稀少な中国美術オークションが大阪で開催 Others | そのほか 展覧会紹介|堺市博物館 仁徳天皇陵古墳のお膝元で、幻の副葬品が初公開中! Religious Arts | 宗教美術 TSUNAGU東美プロデュース 古美術商が語る 酒器との付き合い方 Vassels | うつわ 骨董ことはじめ⑨ 物語と笑いに満ちた江戸文化を楽しむ、ゆたかなる春画の世界 Calligraphy & Paintings | 書画 辻村史朗(陶芸家)・永松仁美(昂KYOTO) 辻村史朗さんに “酒場”で 学ぶ 名碗の勘どころ「黒茶碗の魅力」 Vassels | うつわ トピックス|刀剣文化の応援はじまる 「刀剣乱舞」の生みの親 ニトロプラスが刀剣文化の調査・研究に助成 Armors & Swords | 武具・刀剣 正宗の風 相州伝のはじまり “用と美”の革新、名刀匠正宗の後継者・正宗十哲が繋ぐ相州伝 Armors & Swords | 武具・刀剣 茶の湯にも取り入れられた欧州陶磁器 阿蘭陀と京阿蘭陀 Ceramics | やきもの 加藤亮太郎さんと美濃を歩く 古窯をめぐり 古陶を見る Ceramics | やきもの 展覧会紹介|もうひとりの28 もうひとりの28 人気企画展ふたたび Others | そのほか