クリスティーズNY、北斎の希少な肉筆画や写楽作品、明永樂の甜白釉など。秋季オークションに注目! オークション情報|Christie's *この記事は、2025年9月16日以前に書かれた記事になります。現在、秋季アジア・ウィーク・オークションは終了しています。 クリスティーズ ニューヨークでは、9月16日(火)の日本・韓国美術のライブセールを皮切りに、南アジア美術、中国美術など、アジア美術のオークションが連日開催され、オンラインオークションも含めると9月下旬まで続く。アジア美術の一級品が集まる期間とあって、できれば直接ニューヨークのオークション会場を覗いてみたいものだが、日本にいながらでも現地のオークションの熱気を感じ、入札に参加することができる。現在クリスティーズのウェブサイトでは全ロットの情報をチェックでき、ライブ中継を見ながらオンライン入札に参加することもできるので、まずはサイトを覗いてみてほしい。 クリスティーズの秋季アジア・ウィーク・オークションのハイライトはこちら 9月16日(火) 日本・韓国美術ライブセール 浮世絵や新版画の人気は高く、今回のセールでも注目が集まりそうだ。なかでも、葛飾北斎の肉筆画「立美人図」や、話題の蔦屋重三郎の耕書堂が手がけた東洲斎写楽「二代目小佐川常世の一平姉おさん」、川瀬巴水の新版画などラインナップが充実している。 東洲斎写楽「二代目小佐川常世の一平姉おさん」 落札予想価格:USD180,000 – USD220,000 © Christie’s Images Limited 2025 クリスティーズでは葛飾北斎の浮世絵作品を多く扱ってきたが、クリスティーズ ニューヨークの日本・韓国美術部門長の村上孝明氏によれば、今回ハイライト品として出品される肉筆画「立美人図」は、数ある北斎作品のなかでも希少性が高く、傑作のひとつとコメントしている。 葛飾北斎(1760-1849)《立美人図》 掛軸 紙本着色 98.1cn x 26cm 落札予測価格:USD 100,000-USD150,000 © Christie’s Images Limited 2025 クリスティーズ ニューヨークの日本・韓国美術部門長の村上孝明氏のコメント 葛飾北斎は言うまでもなく、最も有名な日本の画家の一人であり、《神奈川沖浪裏》をはじめとする風景画で広く知られていますが、この肉筆画は彼の芸術性の、あまり知られていない側面を明らかにしています。我々は北斎の版画を数多く取り扱ってきましたが、彼の肉筆画ははるかに稀であり、特に美人画は極めて珍しいものです。日本美術を扱って20年以上になりますが、これまでに出会ったのは一例のみです。本作はその中でも、際立って異彩を放ち、より鮮やかな色彩、緻密な描写を備えた、卓越した傑作と言えると思います。その後の調査によって、本作の特徴が、この時期の北斎の作風と完全に一致することが確認されました。 1944年の一度きりの出版記録を除けば、この作品は実質的に「再発見」といえるでしょう。このような作品が今日再び現れることは極めて稀であり、匹敵する作品を所蔵している美術館はごくわずかです。 なお、9月10日からスタートしているアジア美術オンラインセールにも、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「山下白雨」をはじめとする日本美術品が多数出品されている。オンラインセールは9月25日までの開催となっているので、いまからでもじっくり作品情報を見て入札に参加が可能だ。 ▷ 9月10日(水)- 9月25日(木) アジア美術オンラインセール 9月18日(木)-19日(金) 中国家具・美術ライブセール 2日にわたり開催される中国美術ライブセールでは、雍正在銘の青花唐草文扁壺をはじめ、徳化窯白磁達磨立像や、「雍正御製」銘をもつ作品3点を含むトーマス ・R・ ヴォーン (1908 -1979)の中国陶磁器コレクションが出品されるほか、11〜12世紀の木彫観世音菩薩、Dr. カール・ケンペ (1884-1967)旧蔵の、甜白釉刻葡萄文稜花盤もセールのハイライトとして注目される。 明永楽 甜白釉刻葡萄文稜花盤 径20cm 落札予想価格:USD200,000- USD300,000 来歴:Dr. カール・ケンペ (1884-1967) サザビーズ, パリ, 2008年6月12日 , ロット33 © Christie’s Images Limited 2025 クリスティーズ ニューヨーク 中国美術部門ジュニアスペシャリストのルーシー・ヤン氏のコメント 非常に繊細な器に施され、縁には美しい葉模様が施され、素晴らしく優雅です。釉薬は天白(ティアンバイ)、つまり「スイートホワイト」と呼ばれ、翡翠を思わせる光沢のある透明な白です。実際に見ると、柔らかく明るく輝いています。表面の下には「アンファ」と呼ばれる「秘」の装飾が施されています。これは、かすかに刻印されたり刻み込まれたりした模様で、遠くからはほとんど見えません。よく見ると、ブドウの蔓が浮かび上がります。自然な動きで有機的に描かれています。壁に掛けられた芸術作品とは異なり、回したり、じっくりと観察したり、実際に体験したくなるような作品です。この皿は大変希少で、明朝、永楽帝の治世下、陶磁器の黄金時代を遡ります。チベット仏教に深く傾倒していた永楽帝の信仰は、磁器の美的感覚と機能性の両面に影響を与え、その多くは儀式用に作られました。白は清浄を象徴し、永楽帝の治世下で完成された天白釉は、その精神的な志を体現していました。 クリスティーズ ニューヨーク 秋季アジア・ウィーク オークション予定 2025年9月16日(火) 日本・韓国美術ライブセール 2025年9月17日(水) 南アジア美術ライブセール 2025年9月18日(木)- 19日(金) 中国家具・美術ライブセール 2025年9月10日(水)- 9月24日(水) インド、ヒマラヤ、東南アジア美術オンラインセール 2025年9月10日(水)- 9月25日(木) アジア美術オンラインセール 【お問合せ】 クリスティーズ ジャパン 03-4588-8500(代表TEL) EnquiryJP@christies.com Information クリスティーズ ニューヨーク|秋季アジア・ウィーク・オークション 会期 2025/9/16-2025/9/25 会場 クリスティーズ ニューヨーク 住所 20 Rockefeller Plaza New York, NY 10020 USA URL https://www.christies.com/en/events/asian-art-week/what-is-on#auctions TEL お問合せ|クリスティーズ ジャパン 03-4588-8500(代表) RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2025年12月号・2026年1月号No.584 廣田不孤斎の時代 新しい美の発見者 廣田松繁(不孤斎 1897 〜1973)は、東京・日本橋に西山保(南天子)とともに壺中居を創業し、国際的評価の高い鑑賞陶磁の名店に育てました。今号は小説家の澤田瞳子さんをはじめ、不孤斎本人を知る関係者の方々を取材。旧蔵品や資料から、不孤斎が見出した美を特集します。 そのほか宮武慶之さんと陶芸家の細川護熙さんの対談や、デザイナーのNIGO®さん、起業家の伊藤穰一さんへのインタビューなど、現代数寄者やクリエイターの方たちを紹介します。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 東京・京橋に新たなアートスポット誕生 TODA BUILDING Others | そのほか 「美の仕事」特別編 池坊専宗 中国陶磁の色彩にあそぶ Ceramics | やきもの 加藤亮太郎さんと美濃を歩く 古窯をめぐり 古陶を見る Ceramics | やきもの 東京アート アンティーク レポート#3 骨董のうつわで彩る”食”と”花” Others | そのほか 骨董ことはじめ⑧ 昭和100年のいまこそ! 大正〜昭和の工芸に注目 Others | そのほか 小さな煎茶会であそぶ 自分で愉しむために茶を淹れる 佃梓央前﨑信也History & Culture | 歴史・文化 ビンスキを語る ビンスキは どこからきたのか 〜その美意識の起源を辿る History & Culture | 歴史・文化 東西 美の出会い 日本・オーストリア文化交流の先駆け|ウィーン万国博覧会 森本和夫History & Culture | 歴史・文化 百済から近代まで 歴史の宝庫、韓国・忠清南道(チュンチョンナムド) History & Culture | 歴史・文化 名碗を創造した茶人たち Vassels | うつわ 古美術をまもる、愛でる 生糸染めから手機織りで受け継がれる、真田紐師 江南の唯一無二 Others | そのほか イベント紹介|スキモノムスヒ 茶と酒と人と道具と 軽やかに結ぶ スキモノムスヒ Vassels | うつわ