企画展紹介|ザ・プリマ・アートセンター(韓国) ソウルに新たな美術館 誕生 THE PRIMA ART CENTER RECOMMEND 韓国・ソウルに韓国古陶磁を鑑賞できる新たな美術館THE PRIMA ART CENTER(ザ・プリマ・アートセンター)が誕生しました。場所は古い街並みを残す骨董街として人気の文化地区である仁寺洞(インサドン)です。 ザ・プリマ・アート・センターの外観と入口 去る8月26日(火)、グランドオープンを祝い、オープニングパーティが開催されました。当日は国内外から韓国美術を牽引、愛好する識者が参集し、新たな韓国美術のメインスポットとなる美術館の開館を祝福しました。 オープニング記念パーティ 左から4番目が(株)プリマ会長のイ・サンジュン氏 ザ・プリマ・アートセンターは、2024年に同じく仁寺洞にオープンしたThe Prima Hotel(ザ プリマ ホテル)が運営。アートコレクターで知られる(株)プリマ会長の李相俊(イ・サンジュン)氏の韓国古陶磁と絵画のコレクションを展示するとともに、様々な企画展を開催していく予定だそうです。 現在、開館記念展として「紹耘 李雨馥 先生 陶磁コレクション特別展 小中顕大」、「ザ・プリマ・ミュージアム 名品陶瓷」、「現代絵画注目作家展」が開催されています。 なかでも古美術愛好家にとって注目なのは、「小中顕大」展と「名品陶瓷」展。この二つの展覧会の見どころをご紹介したいと思います。 紹耘 李雨馥 先生 陶磁コレクション特別展 小中顕大 「小中顕大」とは、「小さきものに大いなるものが現れる」という意味だそうです。日本では「美は細部に宿る」とよく言われます。これは「神は細部に宿る God is in the details」の言い換えだそうですが、大いなるもの=神、美 と考えると、近い意味を持っているように思います。 この言葉は、中国・明時代の文人で優れた書画を残した董其昌(とうきしょう 1555〜1636)の語録の一つ。韓国の著名な実業家で、ご家族とともに生涯にわたり韓国陶磁を蒐集された紹耘(ソウン) 李雨馥(イ・ウボク)氏は1999年春にある美術史家からこの言葉を聞き、韓国の著名な書家 如初(ヨジョ)金膺顕(キム・ウンヒョン)氏に揮毫いただき、展示ケースの上に掲げておられたそうです。 キム・ウンヒョン氏揮毫の「小中顕大」額と青花草花文小注子(16世紀後半) イ・ウボク氏コレクション 展覧会にて展示されているのは、まさにこの言葉を表現している小さな陶磁コレクション。その内容は高麗青磁103点、粉青沙器(ふんせいさき)3点、李朝白磁381点、合計487点に及びます。 高麗青磁とは、高麗時代(918〜1392)に作られた青く発色した磁器のこと。全盛期の12世紀から13世紀前半の高麗青磁は、その発色の美しさから宝石の翡翠(ヒスイ)にたとえられ、翡色青磁とも呼ばれます。展示では全盛期の翡色青磁から、13世紀後半の高麗青磁を代表する菊の花を象眼したものまで、托盞(台付きの碗)や小壺など優品を多数観覧できます。 高麗青磁 左:象嵌菊花文托盞 右:輪花托盞 13世紀後半 イ・ウボク氏コレクション 粉青沙器とは、その後に建国した李氏朝鮮時代(1392〜1910)の前半、15世紀頃に作られた鉄分の多い黒っぽい土に白い化粧土をかけ、様々な技法で文様を描いたもの。展示では、点数は少ないものの把手と注口のある鉄絵で牡丹文が描かれた小さな酒次など、あまり見られない希少な器形のものがあります。 そしてなんといっても、もっとも力を入れて蒐集されたのは、李氏朝鮮時代の李朝白磁と青花。白磁壺や白磁四角瓶などの名品があります。また文房具も多種多様な硯台78点をはじめ、筆筒、水滴、筆架、墨壺など、まさに机上の宇宙。小さな世界に表現された大きな美を感じます。 青花梅花文小壺 16世紀後半 イ・ウボク氏コレクション 名 品 陶 瓷 ザ・プリマ・ホテルの会長イ・サンジュン氏が30年以上にわたり蒐集してきた韓国陶磁コレクションの名品の展示です。 その中でも目玉となるのは、2007年にクリスティーズNYのオークションで落札された李朝時代18世紀中期の白磁大壺。韓国では月壺(タルハンアリ)と称されるもので、満月のように白く丸い姿形は韓国陶磁の粋を極めたものとして、古くから珍重されています。高49㎝、最大径50㎝の大壺は現存する中でも最大級です。 さらに、李氏朝鮮王室が儀礼に用いたという青花龍文大壺も注目の逸品。五爪の龍は本来皇帝のみが使えるもので、権威の象徴だそうです。高56㎝、最大径20㎝と大型で、8点の現存が確認されているのみだそうです。 このほか、高麗青磁、李朝時代の粉青沙器、青花、白磁など時代ごとに作られた日常の器や文房四宝、祭器などが、学術的にもわかりやすく陳列されていて、韓国陶磁の歴史がたどれます。 韓国古陶磁がお好きな方は、ソウルに行かれたら必見の美術館です。インサドンという観光スポットにあるというのも嬉しいですね。骨董街を散策したらぜひ立ち寄ってみてください。 取材協力:THE PRIMA ART CENTER / RISEIDO ART GALLERY INFORMATION ザ・プリマ・アートセンター開館記念 「紹耘 李雨馥 先生 陶磁コレクション特別展 小中顕大」 「ザ・プリマ・ミュージアム 名品陶瓷」 「現代絵画注目作家展」 開催中〜2026年5月31日(日) 開館時間 10時30分〜19時30分(入館は19時まで) 休館日 月曜日 Information 店名 The Prima Art Center TEL +82 2-725-9111 住所 韓国 ソウル特別市鍾路区仁寺洞キル37-11 URL https://primaartcenter.co.kr/ RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼 電子増刊第6号 残欠 仏教美術のたからもの デジタル月額読み放題サービス 今特集では仏教美術の残欠を特集。 残欠という言葉は、骨董好きの間ではよく聞く言葉ですが、一般的にはあまり使われないと思います。ですが、骨董古美術には完品ではないものが多々あります。また、仏教美術ではとくに残欠という言葉が使われるようです。 「味わい深い、美しさがあるからこそ、残欠でも好き」、「残欠だから好き」 残欠という響きは実にしっくりくる、残ったものの姿を想像させます。そこで今回は、残った部分、残欠から想像される仏教美術のたからものをご紹介します。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 展覧会紹介 「古道具坂田」という美のジャンル People & Collections | 人・コレクション 映画レビュー 配信開始|骨董界の夢とリアルを描いた 映画『餓鬼が笑う』 Others | そのほか 目の眼4・5月号特集「浮世絵と蔦重」関連 目の眼 おすすめバックナンバー 1994年9月号「写楽二〇〇年」 Calligraphy & Paintings | 書画 藤田傳三郎、激動の時代を駆け抜けた実業家の挑戦〈後編〉 People & Collections | 人・コレクション 骨董ことはじめ⑩ 大河ドラマから知る、日本の歴史の奥深さ 稲村香菜Others | そのほか 企画展紹介|銀座 蔦屋書店 日本刀・根付売場 春画と根付の世界をたのしむ Ornaments | 装飾・調度品 骨董ことはじめ⑦ みんな大好き ”古染付”の生まれた背景 Others | そのほか 連載|美の仕事・茂木健一郎 テイヨウから、ウミガメに辿りついたこと(壺中居) Ceramics | やきもの ビンスキを語る ビンスキは どこからきたのか 〜その美意識の起源を辿る History & Culture | 歴史・文化 美術史の大家、100歳を祝う 日本美術史家・村瀬実恵子氏日本美術研究の発展に尽くした60年 People & Collections | 人・コレクション 台北 古美術探訪|国立歴史博物館 歴史と古美術を満喫、台北「国立歴史博物館&植物園」を探訪 History & Culture | 歴史・文化 羽田美智子さんと巡る、京都の茶道具屋紹介 茶道具屋さんへ行こう Vassels | うつわ