展覧会紹介|大阪市立美術館 特別展「NEGORO 根来−赤と黒のうるし」 熱量と刺激を感じる展示 白洲信哉 RECOMMEND 2013年本誌の編集長を拝命し、その年の秋に開かれたのが滋賀県・信楽にあるMIHO MUSEUMの特別展《 朱漆「根来」−中世に咲いた華》だった。久方ぶりにその11月号(第446号)を読み返し、ときの移ろいを感じるとともに、根来について僕なりの解釈はそのまえがきなどで述べたので興味ある方は再読してもらいたい。また、その折に心血を注いだ図録も目の眼から出版され、担当学芸員だった桑原康郎さんも今や学芸部長に昇進、あの図録の制作を終え、しばし目をつぶっても赤かったことを昨日のように思い出し、本展を見るまで自分なりにNEGOROは卒業した感もあった、のだが、10月19日に内覧した大阪市立美術館の特別展「NEGORO 根来—赤と黒のうるし」は見事に裏切られた素晴らしい展覧だった。 1 輪花盆 大阪市立美術館 撮影:佐々木香輔 開催会場である大阪市立美術館所蔵の看板作品であろうか? 入り口に輪花盆(1)がいい感じであったが一点撮りは禁止なので先に進むと、奈良一宮大神神社、鎌倉時代の「楯」(2)なるものが飾られていた。日と月で一対だという。残念ながら二つ揃いで並んではいなかったが、僕の中のベストの杜の懐が深いこと。その右手には同社の見覚えある高坏と吉野蔵王堂文中2年の紀年があるMIHO MUSEUMでは出品しなかった高坏があった。後期には県指定のさらに古い紀年名では最古の高坏が出品されるという。 2 重要文化財 楯 鎌倉時代 嘉元3年(1305)奈良 大神神社 前期展示の日輪(10/13まで) 月輪は後期展示(10/15〜11/9)簡潔に「神と仏」と書かれた垂れ幕 3 右:高坏 京都国立博物館/大神神社伝来(前期展示)左:高坏 南北朝時代 文中2年(1373)/江戸時代 万治2年(1659)修理銘か 個人蔵 内覧に先立つ説明会で大阪市立美術館の内藤栄館長が、先のMIHO MUSEUMの展覧会を監修した河田貞先生のことや、紀年にこだわったとあえて触れていた意味がこの展示で合点がいく。 これは全く違ったコンセプトと、企画への情熱から構成された展覧であることは、次の熊野速玉大社の唐櫃(4)で合点がいく。それは今回初公開だという同じ様式の唐櫃(4)と並んでおり、天井からの垂れ幕に「神と仏」と、第1章のタイトル「根来の源泉」以上に簡潔な表現で示されている。僕の懐かしの瓶子たち(サントリー美術館蔵とMIHO MUSEUM蔵)と個人蔵(5)。「はじめまして、初の巡回展です」とキャプションに添えた「羽人(うじん)のひとこと」にも気がついた。 ※羽人とは、大阪市立美術館が所蔵する中国・後漢時代の「青銅鍍金銀 羽人」(山口コレクション)。美術館リニューアル後に広報大使に就任した。(目の眼 編集部注) ********** つづく 白洲信哉さんによる展覧会レポート全文は、目の眼倶楽部デジタルプランか雑誌プランをご購読いただくとご覧いただけます ▷ 目の眼デジタルプランか雑誌プランをご購読中の方は、 こちらからログインしてご覧ください。 ▷ これからご購読される方は、目の眼倶楽部オンラインストアでお申込いただけます。プランをご利用いただくと、会員限定の記事をご覧いただけるほか、展覧会の招待プレゼントなどの特典にご応募いただけます。 Information NEGORO 根来 - 赤と黒のうるし 開催中 ~ 2025年11月09日 会場 大阪市立美術館 住所 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-82 URL https://www.osaka-art-museum.jp/ TEL 06-6771-4874 大阪市総合コールセンター(なにわコール) 入場料 一般1,800円 高大生1,300円 (税込) 備考 開館時間 9時30分〜17時(入館は16時30分まで) 休 館 日 月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日休館)、9月22日(月)は開館 ※会期中、一部展示替えがあります。 Auther 白洲信哉 1965年東京生まれ。文筆家。様々なメディアで日本文化発信を行っている。父方の祖父母は、白洲次郎・正子。母方の祖父は文芸評論家の小林秀雄。「目の眼」元編集長。 主な著書に『小林秀雄 美と出会う旅』(2002年 新潮社)、『天才 青山二郎の眼力』(2006年 新潮社)、『白洲 スタイル―白洲次郎、白洲正子、そして小林秀雄の“あるべきようわ”―』(2009年 飛鳥新社)、『白洲家の流儀―祖父母から学んだ「人生のプリンシプル」―』(2009年 小学館)、『骨董あそび―日本の美を生きる―』(2010年 文藝春秋)ほか多数。近著は、『美を見極める力』(2019年12月 光文社新書刊)。 この著者による記事: RELATED ISSUE 関連書籍 2013年11月号 No.446 朱とみずがね姫 〜 根来の源流を探る この秋、空前絶後の根来展が開催される。黒漆の下塗りの上に朱漆が重ねられた漆器は「根来塗り」と呼ばれ、神饌具や、仏具、食器や酒器、茶道具、文房具など様々な用途に使われた。名の由来となった紀州根来寺は鎌倉時代から南北朝にかけて隆盛を極めたが、豊臣秀吉の根来攻めで灰燼に帰し、戦火を逃れた工人たちが、根来塗りの技法を各地に伝えたといわれている。日本にある根来の優品のほとんどを集めた展覧会の開催に合わせ、展覧会の見どころとともに根来の魅力、また個人コレクターを訪ねるなど、深く切り込んだ特集をお送りします。 雑誌/書籍を購入する 読み放題を始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 骨董ことはじめ② めでたさでまもる 吉祥文に込められたもの History & Culture | 歴史・文化 藤田傳三郎、激動の時代を駆け抜けた実業家の挑戦〈後編〉 People & Collections | 人・コレクション 展覧会紹介 「古道具坂田」という美のジャンル People & Collections | 人・コレクション 東京・京橋に新たなアートスポット誕生 TODA BUILDING Others | そのほか 骨董・古美術品との豊かなつきあい方① 自分だけのコレクション、骨董品との出会い方「蒐活」編 Others | そのほか 私家本拝見① |「島桑 江戸指物の世界」 受け継がれる美意識、指物師の魂が宿る「島桑」の美術工芸品をまとめた1冊 Ornaments | 装飾・調度品 展覧会レポート|泉屋博古館東京 “物語(ナラティブ)”から読み解く青銅器の世界 Others | そのほか 展覧会紹介|根津美術館 焼き締め陶の魅力を一堂に Ceramics | やきもの 連載|辻村史朗(陶芸家)・永松仁美(昂 KYOTO店主) 辻村史朗さんに”酒場”で学ぶ 名碗の勘どころ「井戸茶碗」(前編) Ceramics | やきもの 2023年8月号 特集「猪口とそばちょこ」 不思議に満ちた そばちょこを追って Vassels | うつわ 縄文アートプライベートコレクション いまに繋がる、縄文アートの美と技 Ceramics | やきもの 東洋美術コレクター 伊勢彦信氏 名品はいつも、 軽やかで新しい People & Collections | 人・コレクション