骨董・古美術品との豊かなつきあい方② 自分だけのコレクション、骨董品との別れ方「終活」編 RECOMMEND 本記事では、骨董品や蒐集品に関する詳細な知識、購入のポイント、そして売却時の注意点を網羅し、将来の資産としての可能性を探ってみます。前半の「蒐活」編は、こちらから。 趣味はなにも骨董だけじゃないが、いまの時代、車やブランド品など換金性の高いものは相場がしっかり決まっていて、いくらでも買取業者がいるだろう。だが骨董は、ややこしい。自分なりにこだわって良いものを集めたつもりだが、たとえ熟練のプロでも見る者にとって評価が大きく分かれる世界だから、残されたほうは扱いに困るだろう。家族が気に入って、大事に受け継いでくれればいいが、普段の言動を見るに期待はできない。だって実際どれくらいの価値があるかなんて自分にもわからないのだ。しかも単なる娯楽を超えた自分の趣味嗜好が濃厚に反映されているから冷静に品定めをされると恥ずかしいものもある。 終活を意識する人たちにとって、骨董・古美術・アート作品は、資産運用の有力な手段となり得る期待もありますが、それを正確に評価する価値判断が大きな決め手となります。本来なら当事者である本人が購入〜蒐集にいたる情報やデータを記録し、それを受け継ぐ後継者、もしくは評価・鑑定する第三者と事前に公的な確認をしておくのがベストなのですが、実際そういうケースはほとんどありません。 ここでは、「終活」= 売却時の注意点と、将来の資産としての可能性を探ってみます。 ◎「終活」編 売却の際の注意点〜どうして売るのか、考えてみる 目次 正確な評価額の把握オークションとネットの活用必要書類の整理感情に流されないリスト作成および整理方法の検討次世代への想い正確な評価額の把握 自分が気に入って購入したコレクション。いざ売却を考える際には、専門の美術商や鑑定士に依頼して、アイテムの正確な評価を行ってもらうことが重要です。市場の相場や需要を理解することで、不必要な損失を避けることができます。しかし、鑑定士の意見だけでなく、自分自身の市場調査と、信頼に足る第三者の意見も大切です。 オークションとネットの活用 「蒐活」編でも紹介したように、良きパートナーとなってくれた専門家に相談するのがベストですが、ジャンルが大きく異なる骨董品や蒐集品の売却には、オークションを利用する方法や、オンラインマーケットプレイスでの販売があります。これらの選択肢は、効率的に売却できる手段ですが、市場の競争も激しいため、適正な価格設定が必須です。 必要書類の整理 売却をスムーズに進めるためには、購入証明書や鑑定書などの書類を整えておくことが必要です。このような証明書は取引時にアイテムの信頼性を高め、買い手との信頼関係を築く役割を果たします。少なくとも自分のコレクションの品名と購入価格、できれば相手や時期などを記した簡単なリストを作っておくことがオススメです。 感情に流されない 売却を考える際には、感情に流されないことが大切です。愛着のあるアイテムでも、市場価値と自己の希望額がズレることがあります。冷静な判断力が求められます。購入したよりも何倍も高く売却できたという事例はほとんどありません。たとえば長い付き合いのある美術商に売却を打診して、購入価格の7〜8割で引き取ってもらえたとしたらその美術商は十分に良心的と言ってよいでしょう。 終活と骨董品 現代では、多くの方が終活を意識しています。大切なアイテムや思い出の詰まった品々を整理することも、その一環として考えられます。骨董品や蒐集品を整理する際には、以下のようなポイントがあります。 リスト作成および整理方法の検討 自分が集めたものにどんな品があるのか、どのアイテムを残し、どのアイテムを手放すかを決めるプロセスは、感情的に難しいものですが、自分の好きなものや価値を再評価する良い機会でもあります。必要のない品を手放し必要なものを残すことで、生活空間がシンプルになり、次の世代への引き継ぎもスムーズになります。この最初の部分だけは、自分独りでしっかりと考えてみましょう。誰かに相談するのはその後です。 次世代への想い 骨董・古美術は、買うことも楽しいものですが、売ることも楽しい体験です。あまり思い悩まず、せっかくの機会を楽しんでみましょう。蒐集品を次世代に引き継ぐことで、家族のつながりを強めることにつながります。自分が大切にしてきたものを、子供や孫に引き継ぐことで、思い出を共有し、文化や歴史を伝えていくことが可能です。 骨董品や蒐集品は、単なる趣味や投資を超え、文化的価値や歴史的背景を感じることができる特殊な存在です。購入や売却を考える際には、専門家の協力を仰ぎ、社会全体の市場動向をしっかりと把握しながら行動することが求められます。さらに、終活を意識することで、次の世代への引き継ぎや、愛着を持ったアイテムとの正しい関係を築くことができるでしょう。 皆様もぜひ、一歩踏み出し、自分のスタイルで骨董品や美術品を楽しんでください。あなたの生活に、豊かさと彩りが加わりますように。 参考)終活に役立つ情報満載|みんなが選んだ終活 ▷ 前半の「蒐活」編 の 記事はこちら ▷ 骨董・古美術に関する雑誌や書籍は、目の眼オンラインストア RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼 電子増刊第6号 残欠 仏教美術のたからもの デジタル月額読み放題サービス 今特集では仏教美術の残欠を特集。 残欠という言葉は、骨董好きの間ではよく聞く言葉ですが、一般的にはあまり使われないと思います。ですが、骨董古美術には完品ではないものが多々あります。また、仏教美術ではとくに残欠という言葉が使われるようです。 「味わい深い、美しさがあるからこそ、残欠でも好き」、「残欠だから好き」 残欠という響きは実にしっくりくる、残ったものの姿を想像させます。そこで今回は、残った部分、残欠から想像される仏教美術のたからものをご紹介します。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 東京アート アンティーク レポート#2 いざ美術店へ |「美術解説するぞー」と行く! 鑑賞ツアー レポート Others | そのほか 骨董の多い料理店 進化しつづける「獨歩」の料理と織部の競演 Ceramics | やきもの 美術史の大家、100歳を祝う 日本美術史家・村瀬実恵子氏日本美術研究の発展に尽くした60年 People & Collections | 人・コレクション ビンスキを語る ビンスキは どこからきたのか 〜その美意識の起源を辿る History & Culture | 歴史・文化 展覧会レポート|泉屋博古館東京 “物語(ナラティブ)”から読み解く青銅器の世界 Others | そのほか 名碗を創造した茶人たち Vassels | うつわ 眼の革新 時代を生きたコレクターたち 青柳恵介People & Collections | 人・コレクション 連載|辻村史朗(陶芸家)・永松仁美(昂KYOTO) 辻村史朗さんに “酒場”で 学ぶ 名碗の勘どころ「井戸茶碗」(後編) Ceramics | やきもの 新刊発売 「まなざしを結ぶ工芸」著者インタビュー 本田慶一郎と骨董と音楽と People & Collections | 人・コレクション 日本橋・京橋をあるく 特別座談会 骨董街のいまむかし People & Collections | 人・コレクション 東京アート アンティーク レポート #4 街がアート一色に|美術店めぐりで東京の街を楽しもう Others | そのほか 世界の古いものを訪ねて#2 アルフィーズ・アンティーク・マーケット|イギリス・ロンドン 山田ルーナOthers | そのほか