骨董ことはじめ① 骨董と古美術はどう違う? RECOMMEND いつもご愛読ありがとうございます。『目の眼』編集のイトウです。 このサイトではどの記事を見ても骨董 古美術に関するさまざまな情報を掲載していますが、この閉鎖的で奥の深い、迷路のようなわかりにくい世界について、初心者のみなさんにもわかりやすく紹介すべくこのシリーズを始めます。 テーマも内容もアットランダムですが、目の眼の取材の合間を縫って「編集後記」ならぬ「編集中記」のつもりで、みなさんの疑問にお答えしつつ、少しでもこの世界に親しんでいただくためのお役にたてればと思います。 「骨董」と「古美術」はどうちがう? さて、この文章の2行目に早くも「骨董」と「古美術」という2つの言葉が出ましたが、果たしてこの2つはどう違うのでしょうか? まず最初は、この点について確認してみましょう。 この疑問は昔からあったらしく、東京・日本橋の名店「壺中居」の創業者の一人であり、戦前戦後の骨董界の立役者であった廣田不孤斎(ひろた・ふこさい)は、著書『骨董うらおもて』のなかで、正木直彦(明治から昭和初期の美術行政家であり、東京美術学校〈現・東京藝術大学〉の校長を長く務めた人物)の受け売りとしてこう述べています。 「~ 骨董とは中国の俗語で、ゴチャゴチャといろいろなものを雑然とかき集めたもの~」とと紹介しています。 そのうえで、「~ しかし書画骨董と一口に申しますと、売買の対象となる古美術品一般ということになりましょう~」とも述べています。 ここから見えてくるのは、同じく古いものでありながら、「骨董」というのは「古美術」よりも対象とする範囲が広く、書画とか美術工芸品以外にも多岐のジャンルにわたり、しかも価値の高いものも低いものも一緒くたにかき集められたもの、という広義の意味で使われ、「古美術」とは、そのなかで美術品として価値のあるものという狭義の意味で使われる、というのが、当時の理解だったようです。ただこれも諸説あり、違った捉え方をしている人もいます。 一方、西洋の「アンティーク」という言葉に置き換えて考えてみると、実はこちらは明確に定義されています。「製造されてから100年を経過した手工芸品・工芸品・美術品」である、と1934年にアメリカで制定された通称関税法に記載され、この捉え方はWTO(世界貿易機関)で国際的にも採用されています。つまり作られてから100年経てば、みな「骨董」であり「古美術」なのです。なんてわかりやすい! ただ日本ではいまもこの2つの言葉は明確に定義されてなくて、お店のご主人それぞれの判断で「骨董商」「古美術商」と名乗っています。ちなみに「道具商」とか「古物商」という呼称もあり、要は扱っているジャンルや専門分野の違いであって、どちらが上とか下とか区別はありません(たぶん…)。ただ、より価値の高い美術品を専門に扱うという意味で「古美術」という名称にこだわっている方々も少なくありません。 かつて文豪・川端康成は「私の古美術は骨董というものではない」と断言していたと言われていますが、それも個人の見解というものでしょう。 ということで、「骨董」と「古美術」はほぼ同じ意味あいです。ただ、この2つの言葉には微妙にニュアンスの違いがあり、見解や違いにこだわる人もいるんだ、ということを憶えておくとよいでしょう。 RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2025年8・9月号No.582 古美術をまもる、愛でる 日本の古美術には、その品物にふさわしい箱や仕覆などを作る文化があります。 近年では、そうした日本の伝統が海外でも注目されるようになってきましたが、箱や台などをつくる上手な指物師、技術者は少なくなっています。 そこで今回は、古美術をまもる重要なアイテムである箱・台などに注目して、数寄者のこだわりと制作者たちの工夫をご紹介します。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 大豆と暮らす#3 おから|大豆がつなぐ、人と食 稲村香菜Others | そのほか 2023年8月号 特集「猪口とそばちょこ」 不思議に満ちた そばちょこを追って Vassels | うつわ 骨董・古美術品との豊かなつきあい方① 自分だけのコレクション、骨董品との出会い方「蒐活」編 Others | そのほか 連載|辻村史朗(陶芸家)・永松仁美(昂 KYOTO店主) 辻村史朗さんに”酒場”で学ぶ 名碗の勘どころ「井戸茶碗」(前編) Ceramics | やきもの 古美術店情報|五月堂 東京・京橋から日本橋へ 五月堂が移転オープン Others | そのほか 連載|辻村史朗(陶芸家)・永松仁美(昂KYOTO) 辻村史朗さんに “酒場”で 学ぶ 名碗の勘どころ「志野茶碗」(前編) Ceramics | やきもの 日本橋・京橋をあるく 特別座談会 骨董街のいまむかし People & Collections | 人・コレクション 阿蘭陀 魅力のキーワード 阿蘭陀の謎と魅力 Ceramics | やきもの 根付 怪力乱神を語る 掌の〝吉祥〟を読み解く根付にこめられた想い Ornaments | 装飾・調度品 スペシャル鼎談 これからの時代の文人茶 繭山龍泉堂 30年ぶりの煎茶会 龍泉文會レポート People & Collections | 人・コレクション トピックス|刀剣文化の応援はじまる 「刀剣乱舞」の生みの親 ニトロプラスが刀剣文化の調査・研究に助成 Armors & Swords | 武具・刀剣 東京アート アンティーク レポート#3 骨董のうつわで彩る”食”と”花” Others | そのほか