展覧会紹介|根津美術館 焼き締め陶の魅力を一堂に 根津美術館 RECOMMEND 根津美術館で開催中の企画展「焼き締め陶 ―土を感じる―」では、日本における焼き締め陶の歴史と美しさを紹介しています。焼き締め陶は釉薬を使わず高温で焼かれたやきもので、特に茶道具として人気を博してきました。展覧会では根津美術館所蔵の茶陶を中心に、日本民藝館・個人蔵を集めた中世の壺・甕なども展示されています。 1. 賞玩のはじまり ―素朴を愛でる― 展示風景 展示は「1.賞玩のはじまり ―素朴を愛でる―」「2.南蛮の将来品 ―形を尊ぶ―」「3.桃山の熱狂 ―景色を楽しむ―」「4.江戸の趣向 ―土肌を求める―」「5.中世の壺・甕の再発見 ―土と炎を見つめる―」の5章から構成され、焼き締め陶がどのように茶道具として用いられ、また愛でられてきたかを解説しています。 2. 南蛮の将来品 ―形を尊ぶ― 展示風景 特に、焼き締め陶が茶室で使用されるようになったのは16世紀からで、南蛮物などの外国製品が日本に入ってきたことが影響しています。展示では、焼き締め陶の形や質感が如何に茶人たちを魅了してきたかも伝えられています。 見どころは、ベトナムなど南方から運ばれ、水指や建水、花入に見立てられた上手(じょうて・出来のよい作品)の南蛮〆切水指や南蛮切溜花入です。 3. 桃山の熱狂 ―景色を楽しむ― 備前焼の花入、水指の展示風景 3章では、桃山時代から江戸時代にかけて、備前の粘りのある土で作られた自在な造形の徳利や茶入、さらに備前で最も良質な土で作られた緋襷鶴首花入(ひだすきつるくびはないれ)、信楽・伊賀の明るい土肌やビードロ釉など、江戸時代に茶陶として作られた焼き締めの景色を活かした水指、建水、茶入などが観賞できます。 4. 江戸の趣向 ―土肌を求める― 信楽写芋頭水指 京都 野々村仁清作 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵 江戸時代の焼き締め陶の人気は、色絵で知られる京焼の野々村仁清や本阿弥光甫が信楽を写していることからも知ることができます。 5. 中世の壺・甕の再発見 ―土と炎を見つめる― 展示風景 本展では、根津美術館を創設した初代根津嘉一郎が蒐集した焼き締め陶の逸品を鑑賞できるほか、昭和時代に愛された中世古窯の壺・甕の名品の数々を日本民藝館・個人蔵にて一堂に集めた得がたい機会となっています。 さらに10月には、焼き締め陶の美を追究する3人の現代作家、打田翠氏、松永圭太氏、伊勢﨑晃一朗氏の作品を、庭園の茶室にてそれぞれ金曜から日曜の週末3日間展示。 打田翠作「心象」 10/3(金)〜5(日) 展示会場:斑鳩庵・清渓亭 松永圭太作「蛻(もぬけ)」 10/10(金)〜12(日) 展示会場:披錦斎・一樹庵 伊勢﨑晃一朗作「打文壺」 10/17(金)〜19(日) 展示会場:弘仁亭・無事庵 ※上掲3氏の作品は参考作品のため、必ずしも展示されるとは限りません。 日本で愛される焼き締め陶の長い歩みを一望できる展覧会です。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。 ——————– 目の眼倶楽部会員サイトでは、本展の担当学芸員下村奈穂子さんにインタビュー。焼き締め陶とは何か、展示の見どころなどをわかりやすく、じっくり解説していただいています。 ▷ 目の眼デジタルプラン、目の眼雑誌プランをご利用いただいている会員の方は、こちらから記事をご覧いただけます(サイトへのログインが必要です)。 展覧会紹介記事はこちら https://club.menomeonline.com/blogs/artexhibition/nezumuseum_202509 ▷ 目の眼デジタルプラン、目の眼雑誌プランをご利用いただくと、会員サイト限定記事もご覧いただけます。 プランのご案内はこちらから▼ 目の眼倶楽部デジタルプラン(目の眼デジタル月額読み放題)、 雑誌プラン(紙版『目の眼』年間購読) プランをご利用いただくと、会員限定の記事をご覧いただけるほか、展覧会の招待プレゼントなどの特典にご応募いただけます。 Information 焼き締め陶 ―土を感じる― 開催中 ~ 2025年10月19日 会場 根津美術館 住所 東京都港区南青山6-5-1 URL http://www.nezu-muse.or.jp/ TEL 03-3400-2536 入場料 オンライン日時指定予約 一般1300円 学生(高校生以上)1000円 小中学生無料 備考 ◎開館時間 10時~17時(最終入館16時30分) ◎休館日 毎週月曜日、ただし10 月13 日(月・祝)は開館、翌火曜日休館 RELATED ISSUE 関連書籍 2014年11月号 No.458 備前の里を訪ねて(SOLD OUT) 目の眼的六古窯の旅 第二弾 日本は窯業の盛んな国であるが、一大産地と歌われた六古窯のなかでもとりわけ歴史があり現在も盛んに窯の火を焚き続けているのが備前焼だ。 昔ながらの松割り木の燃料を用いて、穴窯や登り窯で釉薬をかけないで、良質な陶土をじっくりと焼き締める備前焼は素朴でありながら奥深い。 備前焼を現代に継承する陶芸家、古美術商などを訪ね、古備前コレクションを紹介。 また地味豊かな備前の街の魅力も紹介します。 雑誌/書籍を購入する 読み放題を始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 東京アート アンティーク レポート#2 いざ美術店へ |「美術解説するぞー」と行く! 鑑賞ツアー レポート Others | そのほか 古唐津の窯が特定できる「分類カード」とは? 村多正俊Ceramics | やきもの 眼の革新 鈍翁、耳庵が愛した小田原の風 People & Collections | 人・コレクション 東京・京橋に新たなアートスポット誕生 TODA BUILDING Others | そのほか 連載|辻村史朗(陶芸家)・永松仁美(昂KYOTO) 辻村史朗さんに “酒場”で 学ぶ 名碗の勘どころ「井戸茶碗」(後編) Ceramics | やきもの 昭和時代の鑑賞陶磁ブーム 新たなジャンルを作った愛陶家たち People & Collections | 人・コレクション ビンスキを語る ビンスキは どこからきたのか 〜その美意識の起源を辿る History & Culture | 歴史・文化 花あわせ 心惹かれる花は、名もなき雑草なんです 池坊専宗Vassels | うつわ 映画レビュー 配信開始|骨董界の夢とリアルを描いた 映画『餓鬼が笑う』 Others | そのほか 展覧会レポート|大英博物館「広重展」 名所絵を超えた“視点の芸術”が、いま問いかけるもの 山田ルーナCalligraphy & Paintings | 書画 骨董ことはじめ⑦ みんな大好き ”古染付”の生まれた背景 Others | そのほか 東京アート アンティーク レポート#3 骨董のうつわで彩る”食”と”花” Others | そのほか