愛しの青 五島美術館で古染付・祥瑞をみる

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祥瑞胴〆茶碗 五島美術館蔵(11月18日(火)~12月7日(日)に展示)

祥瑞砂金袋形水指 泉屋博古館東京蔵

 

 

このたび東京・世田谷にある五島美術館にて、古染付と祥瑞の名品がずらりと並ぶ展覧会が開催される(12月7日まで)。

 

 

 

祥瑞一閑人反鉢 個人蔵

 

 

 

古染付と祥瑞は、17世紀前半に中国・景徳鎮の民窯で焼造され、日本に将来された染付磁器です。

17世紀前半という時期はアジアでは大きな時代の変革期にあたり、日本では1600年の関ヶ原の戦い、1615年の大坂夏の陣を経て数々のドラマを産んだ戦国時代が終わりを告げ、徳川家康によって江戸時代が始まります。一方、中国大陸では1644年に明が滅亡し、清が大陸を支配する王朝交代期にあたります。つまり古染付・祥瑞が作られた当時の景徳鎮とは激動と戦乱の時代だったわけです。

 

 

 

古染付猿図桃形向付 五客 石洞美術館蔵

 

 

しかし文化面でみれば明の末期は優れた書画、文学が生まれた爛熟期にあたり、景徳鎮では世界各国の注文に応えてさまざまなやきものが輸出されました。なかでも大ヒット商品が「青花」で、ヨーロッパでは「Blue&White」とも呼ばれた染付磁器でした。この染付も輸出先のニーズ・嗜好に合わせていろいろなスタイルのうつわが生産されますが、とくに茶の湯が大流行していた日本からは茶道具して映えるうつわの注文が殺到していました。

 

 

 

古染付辻堂香合 五島美術館蔵

 

 

古染付は白く滑らかな磁器の器面に鈍い発色の青い文様が描かれた、余白の多い自由奔放で遊び心いっぱいの絵付けが楽しく、一方の祥瑞は鮮烈な青色の精緻な文様が器面を覆う華やかな器で、両者の趣は異なりますが、どちらも茶の湯に使用する器として、当時の日本人に大変好まれました。これが戦乱の時代、大国が滅亡するさなかに生まれたと思うとたいへん興味深い。

 

 

古染付が誕生しておよそ400年。本展では、館蔵品だけでなく、野村美術館や、根津美術館、徳川美術館、泉屋博古館、石洞美術館など、昔から名品として知られ、名だたる美術館に所蔵されている品々から個人蔵の知られざる優品まで一堂に集められ、あらためて古染付、祥瑞の魅力を紹介します(会期中一部展示替あり)。

 

Information

特別展「古染付と祥瑞 ー愛しの青ー」

開催中 ~ 2025年12月07日

会場

五島美術館

住所

東京都世田谷区上野毛3-9-25

URL

TEL

050-5541-8600(ハローダイヤル)

入場料

入館料:一般1400円/高・大学生1100円/中学生以下無料 

備考

開館時間:10時〜17時(入館は16時30分まで) 休館日:毎月曜日(11月3日・11月24日は開館)、11月4日[火]、11月25日[火]

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