TSUNAGU東美プロデュース

古美術商が語る
酒器との付き合い方

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初期伊万里福字文鎬徳利、鶏龍山絵刷毛目ぐい吞み

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東京美術倶楽部が運営する美術品専門ECモール「TSUNAGU 東美」とのこれボレーション企画としてスペシャル座談会を開催。プロから見た酒器との出会い方、付き合い方についてお話を聞かせていただきました。

 

 

 

 

池田 東京美術倶楽部のインターネット販売サイト「TSUNAGU東美」が、この夏の「東美正札会」で「酒のうつわ」と題した特別展示会を開催します。この催事は前年に引き続き、『目の眼』さんとのコラボ企画として、7月号の酒器特集と連動した形で行いますので、今夜は出展者の代表として酒器好きのみなさまにお集まりいただき、プロから見た酒器との出会い方、付き合い方についてお話を聞かせていただければと思います。

 

まずは順番にお持ち寄りいただいた酒器のご紹介をしていただきましょうか。

 

初期伊万里草花文盃、隅田川焼都鳥桜花文盃、くらわんか網目文盃、古染付竹文角盃

 

青井 今回は、販売品というより個人的に使ってる酒器を、というリクエストだったので、小さなものばかりです。ふだん居酒屋に行くときとか、なにかの会合があるときは、特にお誘いがないときも盃を持って歩いてるんだけど、できるだけ季節感に合わせて使いたいなと思っていて、今日は春から夏によく使う4点を持ってきました(写真上・右)。陶器のものが隅田川焼で、トレードマークの都鳥と瓢箪のマークが外面に描かれていますが、これは見込に桜花が散らしてあって、春に飲むと気分がいいですね。あとは染付で、初期伊万里の蘭文、くらわんかの網手、四角いのは笹文に日月が描かれていて、めでたいので正月でも使えますね。

 

八木 いかにも青井さんらしいセレクトですね。

 

青井 庶民代表というか、ビンスキ代表だね

 

小松 いえいえ秋から冬用のものも見たいですね。一年通していくつくらいあるんですか?

 

青井 持ち歩き用は20点くらいかな。季節や、お店の雰囲気に合わせてその日の気分次第です。

 

田中悠「つつみもの」ワイングラス、常滑山盃、魯山人伊賀焼盃、古九谷赤瓔珞文盃、春海バカラグラス、大正ガラス盃

 

八木 私はバラエティ重視で持参しました(写真上)。まず一杯目は必ずビールを飲むので、春海バカラなんですが、ちょっと他では見ないデザインでしょ。少し大きめで、10年くらい気に入って使ってます。古いものでは、私は修業時代伊万里を勉強しましたので、この古九谷の瓔珞文盃はよくバッグに入ってます。瑕だらけですが燗酒を飲むのには最適です。平盃は常滑の山盃。長谷雄堂さんから分けてもらいました。それと今回は近現代ものの枠で呼ばれたので、魯山人を持ってきました(写真左から3つ目)。伊賀焼なんですが、形は根来を写しているそうです。一見奇抜に見えますが、高台のグリップが効いて、意外に持ちやすいんです。そして最後、この黄色いのは田中悠さんという現代作家の「つつみもの」というシリーズのオブジェで、布で包まれたような陶磁器なんです。おもしろいでしょう。さすがにこれで呑んだことはありませんが皆さんに見ていただきたくて持ってきました。

 

小松 私も個人的なラインナップで、徳利は河瀬無窮亭(虎三郎)という奈良の茶人による手捻りの作です(写真下)

 

大正ガラス徳利、明治ガラス盃、無地唐津盃、無地唐津輪花平盃、鍋島青磁有平縞文筒猪口、河瀬無窮亭手捻り徳利

 

八木 一瞬、丹波焼の「住吉丸太かうし」のものかと思いました。

 

小松 確かに! 意識してたのかもしれませんね。これはイッチンで「佐保山 無窮亭」と書かれています。筒盃は鍋島焼で、白磁の胎土にを入れてそこに青磁釉を流し込むという手の込んだ作りです。ガラスは明治〜大正頃のもので、うすはりの盃は元々向付なのかな、時々見かけるたびにあるだけ買い集めています。唐津は私にとっての基準作と言いますか、一見さりげないものですが、古唐津の要素を兼ね備えていて、これ以上のものはお客様に、これ以下のものは商品として扱わないようにと心がけています。いわば指標みたいなものですね。もう一つの輪花は本来唐津には見られない「ピントチ」という美濃の技法が使われていて、ちょうど文禄の頃、古田織部が唐津に在陣したときの唐津と美濃の交流を裏付けるものとして手許に置いています。

 

八木 いいサイズの唐津ですね。

 

小松 最近酒量が減りましたので、これくらいでちょうど良くなりました。でも見込みが深いのでそこそこ入ります。輪花の方も6センチ台という平盃としては貴重なサイズですね。

 

池田 私はあまり酒器を扱わないので、自分の酒器を持とうと思ってなかったのですが、美術倶楽部の先輩でお世話になってる瀬津勲さん(瀬津雅陶堂)が「君に似合うと思うんだよね」とオススメしてくださって手に入れた鶏龍山の盃を持ってきました(写真下)

 

初期伊万里福字文鎬徳利、鶏龍山絵刷毛目ぐい吞み

 

青井 立派だねえ。

 

池田 これは赤星五郎旧蔵で、浅川伯教の箱書があります。赤星さんはこれを気に入って20〜30年使っていたそうです。病気で禁酒した後、これだけは最後まで残していたが、あるとき小林秀雄氏に備前の徳利を自慢したところ、向こうのペルシャと交換する事になり、この盃が徳利に似合うからといって呈上したが、数日経って盃が恋しくなり、とうとう10日経って取り返してしまった。というエピソードが赤星さんの本に書かれています。たまに瀬津さんからは、「久しぶりにその盃を使わせてくれ。」とご連絡を頂き、以来お食事をご一緒させていただく機会が増えました。数寄者を魅了する物なのだなと実感しています。

 

八木 祥三さんを酒器の魅力に触れさせようとしてるのかもしれないね。

 

池田 今日は酒器好きな方ばかりなのでお聞きしたいのですが、何か酒器にまつわる失敗談なんてありますか?

 

青井 最近しょっちゅうやってしまうんだけど、呑んだ後に店に置き忘れてしまって、大体は見つかるんですけど、たまに紛れてしまって出てこないことがあるんですよ。

 

八木 しょっちゅうなんですか? 今度ぜひ一緒に呑みましょう(笑)

 

池田 忘れるの狙ってるんですか(笑) 八木さんは何かありますか?

 

八木 私の話じゃないんですけど、交換会で私の出したものを高く買ってくれた先輩がいて、うれしくてお礼にその日に買った初期伊万里の蕎麦猪口をプレゼントしたんです。ところがその日の打ち上げがやたらと盛り上がりましてね、二次会の寿司屋でその先輩があげたばかりの蕎麦猪口を落として真っ二つになったことがありました。先輩は謝ってくれたのですが、もう差し上げたものですから残念でしたね、で終わりましたが。

 

池田 その打ち上げ、私もいましたが凄かったですね、11人くらいなのにお銚子87本も空けて、焼酎やワインも散々呑んで、そのお店の最高記録だったそうですよ。

 

青井 そんなことがあったんだ。

 

池田 いやいや、青井さんもいらっしゃいましたよ(笑) 小松さんはいかがですか?

 

小松 若い頃はよく分かってなくて、瑕やカセがあるものを使ってしまったら黒ずんでしまって、そういうものは実際に使うときは注意が必要なんだなと学びました。

 

池田 確かに気を使うものはありますね。徳利なんかもメンテナンスに手間がかかりますから、最近は片口にする方が多いようです。父があるとき、しばらく使ってなかった徳利に酒を入れたらカビで緑色になった酒が出てきたことがあります。

 

私はある年末に珍しく唐津の盃を買いまして、正月にそれで気持ちよく呑んで寝てしまったんです。ふと気づいたらテーブルの料理も食器もキレイに片付けられて唐津も見つからない。慌てて探したら食洗機に入ってたことがありました。家族に気を使わせないよう普段は私が管理するんですが、正月で気が緩んでたんですね。幸い盃は何のダメージもなく回収できたのですが、反省しました。

 

小松 ああ、食洗機はウチも経験あります。

 

池田 TSUNAGU東美はネットでの販売ですが、酒器を買う方にアドバイスなどありますか。

 

八木 むかし千点ほどの酒器コレクションを一括で買ったことがあります。その販売会をしたとき3割ほどは飲まない人でした。飲む人は重さや手取り、呑み口が気になるでしょうが、呑まない人なら純粋に姿形で買えるからネットの方が向いているかもしれませんね。そして呑む人は、今度の正札会で開催されるリアルの展示会と試飲会でしっかりと体感して買っていただいてはいかがでしょうか。

 

池田 ありがとうございました。

 

 

 

 

【オンラインモール】TSUNAGU東美「酒のうつわ」

7月1日(月)〜10日(水) ※オンライン販売

https://tsunagu-toobi.com/

 

 

「中元東美正札会」

7月6日(土)〜7日(日)   *開催時間:6日 10時〜18時 / 7日 10時〜16時

東京美術倶楽部 [東京都港区新橋6-19-15]

入場料:無料

問合せ:03-3432-0191

アクセス:三田線「御成門駅」A4出口より徒歩2分

浅草線・大江戸線「大門駅」A4出口より徒歩5分

https://www.toobi.co.jp/

 

 

 

※撮影協力

日本料理 栩翁S (くぉうえす)

所在地:東京都港区南青山7-14-6 南青山TCビル1F

問合せ:03-3498-5855

営業時間:18時〜23時

定休日:日曜日・祝日

https://www.kuou-s.com/

 

『目の眼』2024年7月号 特集〈酒器を買う〉より

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