骨董・古美術品との豊かなつきあい方① 自分だけのコレクション、骨董品との出会い方「蒐活」編 Others | そのほか この頃ニュースをみていると、まさしく「時代の変わり目」に差し掛かっていることを感じる。「政治」や「経済」といった大局的な意味でも、そんな大事には関わりなく生きてきた庶民のささやかな暮らしぶりにおいてもその余波はやってきて、とうとう誰もが一回立ち止まって、「これまで」と「これから」について考え直さなきゃいけない岐路に立たされているのではないだろうか……。あーメンドクサイ。 人生、家族、仕事、健康…カタをつけなきゃ問題は山ほどある。若者はこれからいくらだってやり直せるからギリギリまで先伸ばしにしても構わないのだろうけど、こうして人生の後半戦を迎えた私たちにとって、リセットボタンをいくら押したところで残り時間は少ない。自分は、この人生でなにを遺したと言えるだろうかと考える。資産? まあ資産は遺しておけば家族は喜ぶだろうが自分が死んだら関係ない。地位や名誉も同様だ。では、趣味で集めた骨董はどうしよう…。 趣味はなにも骨董だけじゃないが、いまの時代、車やブランド品など換金性の高いものは相場がしっかり決まっていて、いくらでも買取業者がいるだろう。だが骨董は、ややこしい。自分なりにこだわって良いものを集めたつもりだが、たとえ熟練のプロでも見る者にとって評価が大きく分かれる世界だから、残されたほうは扱いに困るだろう。家族が気に入って、大事に受け継いでくれればいいが、普段の言動を見るに期待はできない。だって実際どれくらいの価値があるかなんて自分にもわからないのだ。しかも単なる娯楽を超えた自分の趣味嗜好が濃厚に反映されているから冷静に品定めをされると恥ずかしいものもある。 ……と、近年、終活を意識する人たちにとって、骨董・古美術・アート作品は、資産運用の有力な手段となり得る期待もありますが、それを正確に評価する価値判断が大きな決め手となります。本来なら当事者である本人が購入〜蒐集にいたる情報やデータを記録し、それを受け継ぐ後継者、もしくは評価・鑑定する第三者と事前に公的な確認をしておくのがベストなのですが、実際そういうケースはほとんどありません。 この記事では、骨董品や蒐集品に関する詳細な知識、購入のポイント、そして売却時の注意点を網羅し、将来の資産としての可能性を探ってみます。 ◎蒐集編 骨董品・蒐集品の魅力とは 〜どうして買うのか、集めるのか考えてみる 目次 文化と歴史の体現資産としての可能性専門家との連携アイテムのバックグラウンド資産価値の把握文化と歴史の体現 骨董・古美術の蒐集とは、人々の生きた時代や文化を反映した特別な存在です。一定の金額を出せば寸分間違いなく同じレベルの商品が揃うブランド品などと違い、すべてが一点物。例えば、古代の陶器や江戸時代の家具、戦国時代の甲冑などは、それぞれ独自のストーリーを持ち、その背後には歴史の物語があります。これらを所有することは、何気ない日常に歴史を感じさせ、深い意味を与えてくれます。 骨董品はただの装飾物ではありません。自宅や店舗などの室内に美術品やアンティーク家具を取り入れることで、それを所有している意識がめばえたり、空間への意識も変わるかもしれません。家族や友人との会話に、骨董品・美術品のしつらいを話題にすることもでき、居心地の良い、あなただけの空間を作ることももできるでしょう。 資産としての可能性 骨董品や蒐集品は資産としての価値を持っており、うまく手に入れれば将来的に資産増加が期待できます。特に投資価値の高い作品やアイテムは、時間が経つにつれてその価値が上昇することが多いです。歴史的な意義や文化的な背景を持つアイテムは、特に市場での需要が高いため、しっかりとした情報収集が重要です。 2. 購入のポイント 専門家との連携 骨董品や蒐集品を選ぶ際には、専門家や鑑定士のアドバイスを受けることが欠かせません。彼らは市場の動向や、真贋判定のノウハウを持っており、成功する購入をサポートしてくれます。特に高額商品を購入する際には、その投資が確かなものであることを確認することが重要です。 アイテムのバックグラウンド 購入を考えるアイテムの歴史的背景を理解することが大切です。著名な芸術家が手掛けた作品や、特定の時代に作られたものは、特に高い価値を有します。自分自身がそのアイテムの背景を理解し、愛着を持つことで、購入後の満足感は格段に高まります。 購入を検討しているアイテムが、自身の暮らしにフィットするかも重要です。古いモノが現代的な空間に馴染むか、逆にモダンな要素が重厚なアンティークと調和するのかなど、バランスを考えた選択が求められます。こういったバランスづくりが、あなたのセンスを表す腕のの見せどころにもなります。 資産価値の把握 購入時には、そのアイテムの市場における位置づけや、これまでの過去の取引価格を調査することも必要です。特定のジャンルや時代、さらにはテーマ性を持つアイテムに注目することで、資産としての価値が向上する可能性があります。 というわけで、骨董・古美術品をコレクションするには情報と知識が欠かせません。前もってジャンルや時代、相場観をある程度絞っておけば将来の資産的価値を見据えた体系的な蒐集も可能です。でもそのためにはモノだけでなく、その分野に詳しい美術商や専門家と良い関係性を結び、一種のパートナーシップを築いていくことが必要です。 ただ、そうはいってもまったく未知の、訳のわからぬモノと突然出くわしてしまい、衝動的に購入してしまうのもこの世界によくあること。そういうときこそ周囲に信頼する美術商がいれば、専門分野でなくとも助けてくれるはず。モノ選びより人選びが重要です。『目の眼』では、雑誌・ウェブマガジンを通して、骨董・古美術品のモノの歴史や背景をはじめ、取り扱い方、美術店の情報などを紹介しています。まずは、あなたのコレクションづくりに役立ちそうな情報を探してみてください。 ▷ 骨董・古美術に関する雑誌や書籍は、目の眼オンラインストア (後半の「終活」編につづく ▷ 記事はこちら) RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2025年4・5月号No.580 浮世絵と蔦重 江戸のメディアミックス 江戸時代中期から後期にかけて、もっとも浮世絵の名品が生まれた全盛期、その時代を牽引した一人が蔦屋重三郎。 蔦屋重三郎は、いまでいうインフルエンサーとして活躍した人物で、喜多川歌麿、東洲斎写楽といった現代では世界的芸術家とみなされる浮世絵師を世に出したことで知られています。 今特集では、蔦屋重三郎の手がけた作品を中心に紹介しつつ、浮世絵が江戸期に果たした役割と、その魅力を紹介します。 試し読み 購入する POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 源氏モノ語り 秘色青磁は日本に来たか Ceramics | やきもの 白磁の源泉 中国陶磁の究極形 白磁の歴史(2) Ceramics | やきもの 古美術店情報|五月堂 東京・京橋から日本橋へ 五月堂が移転オープン Others | そのほか 連載|美の仕事・茂木健一郎 テイヨウから、ウミガメに辿りついたこと(壺中居) Ceramics | やきもの 骨董ことはじめ④ “白”を愛した唐という時代 History & Culture | 歴史・文化 スペシャル鼎談 これからの時代の文人茶 繭山龍泉堂 30年ぶりの煎茶会 龍泉文會レポート People & Collections | 人・コレクション 羽田美智子さんと巡る、京都の茶道具屋紹介 茶道具屋さんへ行こう Vassels | うつわ 映画レビュー 配信開始|骨董界の夢とリアルを描いた 映画『餓鬼が笑う』 Others | そのほか 美術史の大家、100歳を祝う 日本美術史家・村瀬実恵子氏日本美術研究の発展に尽くした60年 People & Collections | 人・コレクション 阿蘭陀 魅力のキーワード 阿蘭陀の謎と魅力 Ceramics | やきもの 正宗の風 相州伝のはじまり “用と美”の革新、名刀匠正宗の後継者・正宗十哲が繋ぐ相州伝 Armors & Swords | 武具・刀剣 茶の湯にも取り入れられた欧州陶磁器 阿蘭陀と京阿蘭陀 Ceramics | やきもの