古美術をまもる、愛でる 生糸染めから手機織りで受け継がれる、真田紐師 江南の唯一無二 RECOMMEND 店に置かれた見本。右から武者小路千家好、表千家好、裏千家好。結び 方もそれぞれ異なる。 真田紐師江南(えなみ)は、日本で唯一、生糸染め、 手機織りで真田紐を製作している。 戦国時代中 期に甲賀の武将だった初代が京都に出て真田紐 師を初めてから和田伊三男さんで 15 代目。 真田紐師 江南 十五代店主 和田伊三男さん 2016 年の大河ドラマ「真田丸」で真田紐につ いて考証されるなど活躍している。 真田 紐の歴史にも詳しく、講演やドラマの時代考証 など真田紐に関連する依頼もこなされている。 「よく組紐と真田紐を混同されますが、成立 ちから作り方まで全く違います」。 紐の文様と 結び方には意味があり、読み解くことで情報が 得られる今のパスワードのような機能があったという。和田さんは幼少の頃、見本帳を遊び道具に模様の種類、約束紐などを覚えたそうだ。 明治大正頃の真田紐の見本帳 新しい鮮やかな真田紐もある一方、お茶の 流派、京都の旧家の真田紐の見本もあり、さながら顧客リスト 「紐は傷むので何十年かに一度は掛け替えが 必要ですが、紐の模様には意味がありますから、 古い紐と同じ紐をつけます。同じ紐にできない 場合は古い紐は捨てずに箱に入れておきます。 例えば藪内流さんは武家なので、以前は黒に白い線が入った模様でした。白線は白刃を振り下 ろした残像を表しています。伝統的な紐だけでなく、大正時代などは電車や電線など新しい文物を織り込んだ真田紐を京都の大旦那が作って 羽織りの紐にしたり表現の一つでした」 生糸の染めから手織りまで一貫して行っている。 真田紐には平織と袋織があ るが、平織を織っているところを見せていただいた。 江南 では注文製作だけでなく、店頭では欲しい長さ 分の販売もしているほか、真田紐を使ったアク セサリーや小物も製作販売している。古い篭手(こて) などの展示もしていて、まるで真田紐の博物館。 ぜひ京都に行ったら立ち寄ってみよう。 店奥の棚に置かれた真田紐の巻。 ◎ 真田紐 江南 の真田紐を使った限定商品を、目の眼オンラインストアでも販売中 茶道具の世界では約束紐と呼ばれる各家独特の柄の紐と結び方があります。江南さんの真田紐を使って、表千家(黄色/四方右掛け結び)と裏千家(金茶に松葉色/四方左掛結び)それぞれの箱紐結びをマスターできる練習キットを販売しています。お教室や茶道仲間と紐結びの練習にいかがでしょう。 目の眼オンラインストアはこちら「骨董・古美術を愉しむアイテム」 Information 店名 真田紐師 江南 TEL 075-531-5429 住所 京都市東山区問屋町通り五条下ル上人町430[営業時間10〜17時 水曜日定休] sanadahimoshi_enami RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2025年8・9月号No.582 古美術をまもる、愛でる 日本の古美術には、その品物にふさわしい箱や仕覆などを作る文化があります。 近年では、そうした日本の伝統が海外でも注目されるようになってきましたが、箱や台などをつくる上手な指物師、技術者は少なくなっています。 そこで今回は、古美術をまもる重要なアイテムである箱・台などに注目して、数寄者のこだわりと制作者たちの工夫をご紹介します。 試し読み 雑誌/書籍を購入する 読み放題を始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 目の眼4・5月号特集「浮世絵と蔦重」関連 目の眼 おすすめバックナンバー 1994年9月号「写楽二〇〇年」 Calligraphy & Paintings | 書画 展覧会情報 装い新たに 荏原 畠山美術館として開館 History & Culture | 歴史・文化 TOKYO ANTIQUE FAIR 夏の定番、古美術フェア|東京アンティークフェア Others | そのほか 骨董ことはじめ③ 青磁 漢民族が追い求める理想の質感 History & Culture | 歴史・文化 秋元雅史(美術評論家)x 北島輝一(ART FAIR TOKYOマネージングディレクター) スペシャル対談|アートフェア東京19の意義と期待 People & Collections | 人・コレクション 台北 古美術探訪|国立歴史博物館 歴史と古美術を満喫、台北「国立歴史博物館&植物園」を探訪 History & Culture | 歴史・文化 小さな煎茶会であそぶ 自分で愉しむために茶を淹れる 佃梓央前﨑信也History & Culture | 歴史・文化 羽田美智子さんと巡る、京都の茶道具屋紹介 茶道具屋さんへ行こう Vassels | うつわ 骨董ことはじめ⑧ 昭和100年のいまこそ! 大正〜昭和の工芸に注目 Others | そのほか リレー連載「美の仕事」|澤田瞳子 澤田瞳子さんが選んだ古伊万里 澤田瞳子Ceramics | やきもの 世界の古いものを訪ねて#4 石に囲まれた風景と、人の暮らしに根ざした歴史をたどる 山田ルーナHistory & Culture | 歴史・文化 ビンスキを語る ビンスキは どこからきたのか 〜その美意識の起源を辿る History & Culture | 歴史・文化