アンティーク&オールド グラスの愉しみ 肩肘張らず愉しめるオールド・バカラとラリック RECOMMEND HAGUENEAU 1924年(左) THIONVILLE 1924年(右) 近年人気急上昇中のビストログラスは、和ガラスにも通じるトロッとした肌合いが魅力かつ価格も割安で、骨董初心者にもオススメです。肩肘張らず愉しめる魅力的なオールドグラスたちを『目の眼』ならではの視点で紹介しています。今回は、グラスの世界に詳しい京都の「ギャルリー田澤」さんに案内人をお願いしました。 フランスグラスにあらわされたアール・ヌーヴォとアール・デコ 「グラスの歴史は古代オリエントにまで遡りますが、今回は実用のグラスをメインにというお話ですので、まずはバカラとラリックから見ていきましょう」とのこと。西洋のグラスの展開は古代・中世・近代と大きく三つの画期があるが、現代に繋がるグラスの展開は、この二大ブランドからみていくとよくわかるという。 まず世界のトップブランド「バカラ」は、一七六四年の創業だが、その代名詞ともいえるクリスタルグラスは1816年から製造を開始している。実は、クリスタルグラス自体はこの時代、他の国でも発明されていて、フランスにおいても1586年創業のサン・ルイ社が先行して製造を開始してすでに高い評価を得ていたという。バカラは1816年にサン・ルイと合併したことでクリスタルグラス製造のノウハウを学び、以後独立した。そのため19736に刻印が入る前の古いバカラグラスは、バカラなのかサン・ルイなのか見分けのつきにくいものが結構あるのだが、愛好家も美術商もそこを厳密に分類することにあまり意味はないという考えが主流のようだ。とにかくバカラもサン・ルイもガラスのトップブランドとしていまも君臨しており、多くのファンを魅了している。 またバカラについて付け加えると、1825年に発表された「アルクール」をはじめとするカッティングやグラビュール、エッチング技法を駆使した息の長いヒットシリーズを展開し、コレクターズアイテムとしても不動の人気を得ている。 バカラ エッチンググラスいろいろ(左から3つめはサン・ルイ) 一方、ラリックは19〜20世紀に活躍したフランスの宝飾デザイナー、ルネ・ラリックが手がけた作品群を指す。 当初は宝飾デザインの素材としてガラスを使っていたが、1908年に香水商のフランソワ・コティから香水瓶とラベルのデザインを依頼され、それが大好評を得たことから本格的にガラス工芸の道へと進んだという。先ほどのバカラとは趣を異にしたやわらかでゆらぎのある造形は、当時流行したアール・ヌーヴォやアール・デコの美意識が反映されている。とくにワイングラスはステムと呼ばれる脚にさまざまな意匠やデザインが施されているのが特徴で人気が高いそうだ。田澤さんのすすめで実際にワインを注いでみると、グッとグラスの存在感が華やかになった。 VRILLES DE VIGNE 1921年(左) VIGNE – STRIE 1920年(右) バカラやラリックについては、フランスをはじめ世界中にコレクターや研究者がおり、その歴史や作品を網羅した全集も出版されているので購入の参考にしてほしい。 全文は、読み放題会員webサイトでお読みいただけます 『目の眼』2019年4月号 特集〈アンティーク&オールド グラスの愉しみ〉より抜粋 RELATED ISSUE 関連書籍 2019年4月号 No.511 アンティーク&オールドグラスの愉しみ 刻を経たグラスを酒器として使いこなす、大人のあそび バカラやラリック、サン=ルイといった高級ブランドをはじめフランスやイギリス、オランダなどヨーロッパから招来されたアンティークのワイングラスやショットグラスはそのデザイン性と品格の高さから根強い人気を誇っています。 各地・各時代の古いグラスの基本的な見分け方と目利きのポイントやコレクターやショップを訪ね、その使い方やセッティングのコツなど一から紹介します。 雑誌/書籍を購入する POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 リレー連載「美の仕事」|澤田瞳子 澤田瞳子さんが選んだ古伊万里 Ceramics | やきもの 古信楽にいける 花あわせ 横川志歩 Vassels | うつわ 正宗の風 相州伝のはじまり “用と美”の革新、名刀匠正宗の後継者・正宗十哲が繋ぐ相州伝 Armors & Swords | 武具・刀剣 2023年8月号 特集「猪口とそばちょこ」 不思議に満ちた そばちょこを追って Vassels | うつわ 茶の湯にも取り入れられた欧州陶磁器 阿蘭陀と京阿蘭陀 Ceramics | やきもの 映画レビュー 配信開始|骨董界の夢とリアルを描いた 映画『餓鬼が笑う』 Others | そのほか 根付 怪力乱神を語る 掌の〝吉祥〟を読み解く根付にこめられた想い Ornaments | 装飾・調度品 「美の仕事」特別編 池坊専宗 中国陶磁の色彩にあそぶ Ceramics | やきもの 源氏モノ語り 秘色青磁は日本に来たか Ceramics | やきもの 連載|真繕美 古唐津の枇杷色をつくる – 唐津茶碗編 2 Ceramics | やきもの 骨董ことはじめ⑨ みんな大好き ”古染付”の生まれた背景 Others | そのほか 花あわせ 心惹かれる花は、名もなき雑草なんです Vassels | うつわ