東京アート アンティーク レポート#2 いざ美術店へ |「美術解説するぞー」と行く! 鑑賞ツアー レポート RECOMMEND 4月26日、東京アートアンティーク2025の最終日に行われた『「美術解説するぞー」と行く! 東京アート アンティーク鑑賞ツアー』に目の眼編集部も取材同行しました。 「美術解説するぞー」さん(鈴木博文さん)は、SNSやYouTubeで人気のインフルエンサー。各地で開催される展覧会やイベントにも積極的に参加して、元美術教員の知識と経験を生かしてアートをわかりやすく解説し、一見わかりにくい美術の見どころを教えてくれます。昨年10月に刊行した初の著書「現代アートがよくわからないので楽しみ方教えてください」は早くも1万部を突破、韓国版の出版も決定したそうです。 今回は初日の4月24日と26日の2回にわたり、東京アートアンティーク参加店のなかから興味深い企画展を開催しているお店をまわって2時間程度の鑑賞ツアーを行いました。参加者は事前に申込をした8名ほど。みなさんアート好きかつ老若男女揃ったバラエティ豊かなメンバーで、「美術解説するぞー」さんの幅広い人気がうかがえました。 まずは京橋のランドマークともいえる繭山龍泉堂の前で集合し、そのまま同店の企画展「Arts of Asia」を鑑賞。繭山龍泉堂の主力商品である中国美術をはじめ日本、ペルシア、インドなど広範なアジア美術が展示されていました。「美術解説するぞー」さんは展示されたインドの細密画の額の裏側に施された仕掛けなど、普段見られない部分も紹介してくれました。また日本の土偶がずらりと並ぶ光景も新鮮で、同店の奥の深さを感じました。 次に訪れた林田画廊さんは「ギャラリーセレクション」と題して、日本画を中心に昭和・平成のちょっと変わった絵画作品を展示しており、さまざまな画風で描かれた絵の見方を教えてもらいました。「みなさん会期が終わっても臆せずどんどん絵を見に来てくださいね。私はそれを楽しみにしてます」というご主人の言葉が印象的でした。その後は現代美術を扱うROD GALLERYに移り西久松友花 個展「分解者」を鑑賞。アーティストの背景やこれまでの作品を紹介しながら、今回の個展にはどのような想いが込められているのか、展示された作品のどこに注目すればいいのかなど丁寧に解説してくれました。 次のお店に移動する途中、齋藤紫紅洞のご主人と出会った「美術解説するぞー」さん。当初の予定にはなかったものの、急遽同店の「茶器展」にみんなを引き連れて鑑賞。これもギャラリーツアーの楽しいところ。茶器に込められた意匠や材質、そこに込められたメッセージなどわかりやすく教えてもらいました。 ここまで4店舗をめぐった一行は、日本橋に移動し後半戦。 まずは浦上蒼穹堂で開催中の「中国古代の青銅器と陶器」を鑑賞。教科書でみるような古代の遺物が居並ぶなか、話し上手のご主人と「美術解説するぞー」さんの掛け合いのおかげで、いかつく見えた青銅器も可愛く見えてくるような気がして新鮮な目で見ることができました。 続いてすぐ近くの中長小西では「川瀬忍 美曽手(みぞで)」を鑑賞。普段は端正でなめらかな造形美が魅力的な青磁作品を作る川瀬忍さんが「自分にとって最も身近にある”土”で作品を作れないか」と、2019年頃から奥様のご実家の田んぼの土を分けてもらい試行錯誤を重ねてきた陶器の展覧会。土味を活かした茶碗や壺など、なかなか見られない作家の意欲作にみんなの眼が釘付けになっていたのが印象的でした。 最後はTODA BUILDING 2階にできた「GALLERY COMPLEX」内にある現代アートギャラリーのひとつ、タカ・イシイギャラリー京橋の企画展「森山大道/セイヤー・ゴメス展」を鑑賞。美術館のような広く明るい空間にアーティストの大作が並ぶ風景は、これまで見て来た古美術店や画廊とはまた別世界で、作品によって鑑賞スタイルが変化するおもしろさを体感しました。 「美術解説するぞー」さんは、まだまだいろいろ案内したい様子でしたが、残念ながらここで時間切れ、古代美術から最先端アートに触れる2時間はあっという間に過ぎてしまいました。ここから自由時間でさらにお店をめぐるもよし、戸田ビルディングのカフェで事前に申し込んでおいたドリンクとおやつタイムを楽しむもよし。めいめい解散となりました。 80店以上が参加した今回の東京アートアンティーク。初心者ではどこからどう回ればと迷ってしまうかもしれませんが、こうしたギャラリーツアーに参加すると道筋がついてもっと楽しめると思います。今後の開催にも期待です。 ————————— *東京アートアンティーク2025は、東京の日本橋、京橋、銀座の美術店が参加する”美術まつり”。例年ゴールデンウィーク直前の3日間に開催され、2025年は86軒と1団体が参加し、4月24日〜26日に実施された。会期中は全ての参加店がオープンしているので、”アートめぐり”と”街あるき”を楽しめる格好の機会だ。 ▷ 東京アートアンティーク2025 のウェブサイト https://www.tokyoartantiques.com/ ▷ 関連レポート #1 3人のアーティストが美術・工芸の継承と発展を語らう #3 骨董のうつわで彩る”食”と”花”の空間コーディネート #4 街がアート一色に|美術店めぐりで東京の街を楽しもう RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼 電子増刊第6号 残欠 仏教美術のたからもの デジタル月額読み放題サービス 今特集では仏教美術の残欠を特集。 残欠という言葉は、骨董好きの間ではよく聞く言葉ですが、一般的にはあまり使われないと思います。ですが、骨董古美術には完品ではないものが多々あります。また、仏教美術ではとくに残欠という言葉が使われるようです。 「味わい深い、美しさがあるからこそ、残欠でも好き」、「残欠だから好き」 残欠という響きは実にしっくりくる、残ったものの姿を想像させます。そこで今回は、残った部分、残欠から想像される仏教美術のたからものをご紹介します。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 新刊発売 「まなざしを結ぶ工芸」著者インタビュー 本田慶一郎と骨董と音楽と People & Collections | 人・コレクション 展覧会紹介 「古道具坂田」という美のジャンル People & Collections | 人・コレクション 東京アート アンティーク レポート #1 3人のアーティストが美術・工芸の継承と発展を語らう Others | そのほか イベント紹介|現代素材問答 -ristorante DONO- ristorante DONOから始まる、「美味しいは、美しい」という新しいアートの在り方 Vassels | うつわ 展覧会紹介|大阪市立美術館 特別展「NEGORO 根来−赤と黒のうるし」 熱量と刺激を感じる展示 白洲信哉 Vassels | うつわ 世界の古いものを訪ねて#3 ケルン大聖堂 響きあう過去と現在 ー 632年の時を超え、未来へ続く祈りの建築 山田ルーナHistory & Culture | 歴史・文化 大豆と暮らす#4 骨董のうつわに涼を求めて ー 豆花と冷奴 稲村香菜Others | そのほか 展覧会紹介|V&A博物館 縄文からつづく祈りを纏う。岡﨑龍之祐初のV&A展「JOMONJOMON」 山田ルーナPeople & Collections | 人・コレクション 骨董の多い料理店 進化しつづける「獨歩」の料理と織部の競演 Ceramics | やきもの リレー連載「美の仕事」|澤田瞳子 澤田瞳子さんが選んだ古伊万里 澤田瞳子Ceramics | やきもの 連載|辻村史朗(陶芸家)・永松仁美(昂 KYOTO店主) 辻村史朗さんに”酒場”で学ぶ 名碗の勘どころ「井戸茶碗」(前編) Ceramics | やきもの 正宗の風 相州伝のはじまり “用と美”の革新、名刀匠正宗の後継者・正宗十哲が繋ぐ相州伝 Armors & Swords | 武具・刀剣