展覧会情報|中村記念美術館(金沢) 箱、仕覆、包み〜次第とともに見る愛のカタチ People & Collections | 人・コレクション 釘彫伊羅保茶碗 銘 花緑(展示風景) 現在、金沢の中村記念美術館で「茶道具のものがたり〜次第が語る歴史〜」展が開催されている。 釘彫伊羅保茶碗 銘 花緑 本展は、書画や茶碗をはじめ茶入や香合、釜、花入など古くから大切に伝えられて同館に所蔵された茶道具と、それを保管するための桐箱や、仕覆、包みなどと一緒に展示し、その道具が代々の所有者によってどのように守られ、愛されてきたのかを紹介する古美術好きにはたいへん興味深い内容となっている。 布袋図(展示風景) 布袋図 古銅耳付四方花生(展示風景) 古銅耳付四方花生 「茶会で用いられるさまざまな茶道具は、それを保存するための箱や包布などが付属しています。道具は、長い年月の中で茶人達の手から手へと渡り所有者が変わると、その経緯を記した伝来書や譲状、筆跡鑑定家による折紙や極札などが添えられました。 また、箱や包布の保護のためにひと回り大きな箱を用意して道具とその付属品をともに収め、伝来の歴史を示す資料ごと道具を受け継ぎました。 このような茶道具独特の伝達方法は、茶の湯では道具のみならずその付属品にも付加価値があることを示しています。これらの付属品のことを、茶道具の次第と称します。」 と紹介文にあるとおり、本展では同館所蔵の茶道具をその次第とともに展示し、茶道具が歩んできた歴史とともに紹介されている。 交趾菊蟹香合(展示風景) 交趾菊蟹香合 姫瓜釜(展示風景) 姫瓜釜 内箱から外箱までひとつの茶碗のために用意された何重もの桐箱や、色とりどりの貴重な裂地を縫い上げた仕覆、さらに仕込(しこみ)といって箱の四隅や隙間を埋めるクッション材まで、普段の展示では見られない持ち主の心配りを感じることができる。 こうした次第を一つ一つあつらえた所有者それぞれの美意識と工夫を思い浮かべながら見ると時間を忘れて見入ってしまう。そんな展覧会だ。 会期はあとひと月を切ってしまったが、ぜひご覧いただきたい。 中村記念美術館企画展「茶道具のものがり 次第が語る歴史」 なお2025.7/15発売の『目の眼』8月号では、「古美術をまもる 箱・台・仕覆」と題し、こうした次第について特集します。ご期待ください。 Information 茶道具のものがたり ~次第が語る歴史~ 開催中~7/13 会場 金沢市立中村記念美術館 会期 開催中~7/13 住所 石川県金沢市本多町3-2-29 URL http://www.kanazawa-museum.jp/nakamura/ TEL 076-221-0751 RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼 電子増刊第4号(2025.6月) 林屋亀次郎の眼 デジタル月額読み放題サービス 今特集は、書籍「林屋亀次郎の眼」(2025年6月発行)の見どころを紹介。昭和初期の実業家・林屋亀次郎の人物像や、コレクションのなかから名品をセレクトして茶道具の必須アイテムを初めての方にもわかりやすく解説しています。茶道具の来歴や人となりを知ることで、コレクションへの理解が深まるきっかけになればと思います。 また今回から「シリーズ連載 目の眼的骨董遊学」と題し、各地の骨董街とそこに佇む古美術店を訪ねるレポート記事を紹介していきます。今回はそのスタートとして上野・湯島・本郷にスポットをあてていきます。 試し読み 購入する POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 東京アート アンティーク レポート #1 3人のアーティストが美術・工芸の継承と発展を語らう Others | そのほか 東京アート アンティーク レポート#3 骨董のうつわで彩る”食”と”花” Others | そのほか アンティーク&オールド グラスの愉しみ 肩肘張らず愉しめるオールド・バカラとラリック Vassels | うつわ 眼の革新 時代を生きたコレクターたち People & Collections | 人・コレクション 名碗を創造した茶人たち Vassels | うつわ 骨董ことはじめ⑦ みんな大好き ”古染付”の生まれた背景 Others | そのほか 東西 美の出会い 日本・オーストリア文化交流の先駆け|ウィーン万国博覧会 History & Culture | 歴史・文化 展覧会紹介 世界有数の陶磁器専門美術館、愛知県陶磁美術館リニューアルオープン Ceramics | やきもの スペシャル鼎談 これからの時代の文人茶 繭山龍泉堂 30年ぶりの煎茶会 龍泉文會レポート People & Collections | 人・コレクション 茶の湯にも取り入れられた欧州陶磁器 阿蘭陀と京阿蘭陀 Ceramics | やきもの 骨董・古美術品との豊かなつきあい方② 自分だけのコレクション、骨董品との別れ方「終活」編 Others | そのほか 新刊発売 「まなざしを結ぶ工芸」著者インタビュー 本田慶一郎と骨董と音楽と People & Collections | 人・コレクション