オークション紀行|古美術商×オークション

大聖雄幸

大聖寺屋代表

©Sotheby’s

 美術品を専門とするオークションが行われるようになってからおよそ300年、今日に至るまで古美術商はオークション会社と共存し美術市場を牽引してきた。しかし、近代に入りChristie’sやSotheby’sをはじめとするオークション会社の世界規模での発展により、古美術商とオークション会社の関係は大きく変わった。

 

 従来、オークションの参加者は美術商や美術館などの専門家が中心で、卸売業の性格が強かった。それが1970年代には小売業の性質も兼ね備えるようになる。そして、一部のオークション会社でしか取り入れられていなかった買い手手数料の導入を、1975年から大手オークション会社がこぞって採用したことが今日のオークション会社の躍進につながったと言える。

 

買い手から手数料を取り、売り手の手数料を引き下げることで、それまで古美術商の手に渡っていた私蔵品が直接オークション会社に持ち込まれるようになった。そうしてオークション会社の取引の中心は専門家から個人へと広がり、それにつれて高額の取引が増え、古美術商の存在意義は少なからず揺らいだ(公開オークションが美術品取引の主流でない日本の市場に関しては事情が異なるが、国際的に市場のある中国美術など一部の分野に関しては影響が出ている)。そうした中にあっても、古美術商は高い水準で鑑識眼を保つために専門分野の作品に対する見識を高め在庫を確保し、アートフェアや店舗においてそれに沿った企画展示を行い販売することで美術市場の発展に貢献してきた。

 

 美術市場に参加者が増えれば増えるほど、全体的な質の低下は避けられなくなる。現在の中国美術市場はまさにその問題に直面している。そうした状況の中、過去7年間にChristie’sとSotheby’sの香港で行われた中国陶磁器のオークションの高額落札品上位10点のうち、金額ベースで実に約7割が古美術商により落札されているという報告がある。落札品の多くは顧客の注文によるものであるが、古美術商を通して購入するということは、他の何よりも彼らの作品を見る眼を信頼しているということを反映しているように思う。時代を経るごとに「偽物」や「似せもの」が増える体質の美術業界にとって、市場を健全に保ち個人が参加しやすいようにするためにも、古美術商の眼は欠かせない存在ではないだろうか。

目の眼2014年12月号

Auther

オークション紀行 第6回

大聖雄幸

大聖寺屋代表。大阪の老舗茶道具商で修業後、東京にて東洋陶磁器を中心に取り扱っている。

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