インターナショナルスクール 近衞忠大 クリエイティブ・ディレクター ジュネーヴ・インターナショナル・スクール International School Of Geneva : 国際バカロレア インターナショナルスクールと言われる学校は世界中に多数あるが、1924年にUN(当時は国際連盟)とILO(国際労働機関)の幹部により創設されたジュネーヴ・インターナショナル・スクール(通称:ECOLINT)が世界最初と言われている。 今年100周年を迎え、6月に大きなセレモニーが予定されている。 世界共通の大学入学資格として知られる国際バカロレアは、1960年代に同校の教師たちがつくった資格を土台に、1968年に誕生している。いわば国際教育のさきがけとも言える学校だ。 多くの国際機関が集中し、その職員の子どもたちが通うため、転勤に伴ってクラスメートは目まぐるしく変わっていく。寄宿舎もあり、留学生や、中途半端なタイミングで親が転勤になってしまい、卒業資格を得るために残っている生徒もいた。 私は1981年から85年(小5から中3)までこの学校で過ごした。複数のキャンパスがあり、最初はプレニーという在校生わずか100名程度の小さな小学校に通った。ジャン=マルク・ラムニエールという著名なスイス人建築家による、真っ赤な鉄骨の校舎はまるで宇宙基地のようで、毎朝わくわくしながら通った。アートの先生が校長だったこともあり、課題の多くに絵を描くことや、デザイン的なことが盛り込まれ、英語がまだ拙かったが授業がとても楽しかった。 そして中学(現地では7〜9年生)は一番古いキャンパスで、1929年に建てられた校舎が残るラ・グランド・ボアスィエール(La Grande Boissière)に通った。入校式や卒業式で使われる「グリークシアター」という円形劇場。深い芝があるサッカーグラウンド、演劇の授業で使う劇場、陶芸アトリエなど、極めて充実した学内設備だった。更にはコンピュータの授業が有り、ベーシックという言語の基礎などを習った。 数々の思い出があるが、とにかく世界中の子どもたちがいることが印象的だった。のべで40ほどの国籍のクラスメートがいたと思う。東西冷戦のさ中で、普通は出会うことがない東側の国々、アパルトヘイト問題に揺れる南アフリカ。またスイスは永世中立国なので亡命してきた家族の子どもたちもいた。 多様な人種の中で、お互いの文化の違いやお国事情を感じ、自国のアイデンティティーを問われた。コスモポリタンであるためには自国の文化を良く知ることが重要であることを学んだ。未だ灯台下暗しのままだが。 *近衞忠大さんの連載「雪山酔夢」は雑誌『目の眼』で連載中。過去のコラムはこちらからご覧いただけます。 月刊『目の眼』2024年5月号より Auther 雪山酔夢 近衞忠大(このえただひろ) 1970年東京生まれ。公家、五摂家筆頭・近衞家の長男として生まれ、スイスで幼少期を過ごす。 武蔵野美術大学卒業後、テレビ番組、ファッションブランドの大型イベント制作などに関わる。特に海外との国際的な制作現場を数多く経験。伝統と革新、日本と海外といった違いを乗り越え 「文化とクリエイティブで世界の橋渡しとなる」ことを目指し、クリエイティブ・エージェンシーcurioswitch及びNPO法人七五(ななご)を設立、代表を務める。 この著者による記事: お盆 COLUMN近衞忠大 高野山 COLUMN近衞忠大 毛越寺 曲水の宴 COLUMN近衞忠大 祖父の思い出 COLUMN近衞忠大 スポーツとメモラビリア COLUMN近衞忠大 形見分け COLUMN近衞忠大 RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2024年10月号No.577 李朝空間 癒やしのかたち 日本とは文化的に近しく、かつ異なる美を持つ李朝のやきものや絵画、道具や家具は、古くから日本の蒐集家に愛されてきました。近年は韓流ドラマが定着して、李朝時代の歴史に興味を持つ方も多く、李朝時代の骨董は新しいファンを増やしています。今回の特集では李朝の古美術を用いた心地良い空間の愉しみをご紹介します。 雑誌/書籍を購入する 読み放題を始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 展覧会紹介|堺市博物館 仁徳天皇陵古墳のお膝元で、幻の副葬品が初公開中! Religious Arts | 宗教美術 縄文アートプライベートコレクション いまに繋がる、縄文アートの美と技 Ceramics | やきもの 東京アート アンティーク レポート#2 いざ美術店へ |「美術解説するぞー」と行く! 鑑賞ツアー レポート Others | そのほか 骨董ことはじめ④ “白”を愛した唐という時代 History & Culture | 歴史・文化 夏酒器 勝見充男の夏を愉しむ酒器 Vassels | うつわ 企画展紹介|ザ・プリマ・アートセンター(韓国) ソウルに新たな美術館 誕生 THE PRIMA ART CENTER Ceramics | やきもの 『目の眼』リレー連載|美の仕事 橋本麻里さんが訪ねる「美の仕事」 大陸文化の網の目〈神 ひと ケモノ〉 橋本麻里People & Collections | 人・コレクション 東京アート アンティーク レポート #1 3人のアーティストが美術・工芸の継承と発展を語らう Others | そのほか トピックス|刀剣文化の応援はじまる 「刀剣乱舞」の生みの親 ニトロプラスが刀剣文化の調査・研究に助成 Armors & Swords | 武具・刀剣 世界の古いものを訪ねて#1 ジュドバル広場の蚤の市|ベルギー・ブリュッセル 山田ルーナOthers | そのほか 新しい年の李朝 李朝の正月 青柳恵介 青柳恵介People & Collections | 人・コレクション 根付 怪力乱神を語る 掌の〝吉祥〟を読み解く根付にこめられた想い Ornaments | 装飾・調度品