東京アート アンティーク レポート #4 街がアート一色に|美術店めぐりで東京の街を楽しもう RECOMMEND 今年の東京アートアンティーク2025(2025.4/24〜4/26)に参加した各美術店の展示も面白そうな企画が目白押しでした。 公式パンフレットとガイドマップにチェックを入れながら、全店制覇をされる強者もいるようですが、目の眼編集部が86軒を完全制覇するにはさすがに無理でしたので、今回は古美術店をピックアップしてご紹介。 目次 井上オリエンタルアートGinza古美術桃青繭山龍泉堂megumu art骨董の店 甲斐稲村美術風 招Gallery MARI前坂晴天堂壺中居井上オリエンタルアートGinza 大谷探検隊をご存知でしょうか。明治から大正にかけて、西本願寺の法主大谷光瑞が率い、シルクロードを学術的な発掘調査をしながら探検し、日本に多くの遺物を持ち帰りました。 井上オリエンタルアートGinzaでは、大谷探検隊ゆかりの木俑が2体展示されていました。鎧をまとった中国・唐時代の武人像で、彩色もよく残っている逸品です。古代の木製品は残っているだけでも希少ですから、今回のTAAで多くの方が観覧できたのは素晴らしい機会だったと思います。 古美術桃青 昨年10月に銀座7丁目から銀座1丁目に移転し、初参加した古美術桃青。以前からお店でお茶や仕覆の教室をされていて、フレンドリーで明るいお店です。今回は酒器を中心に手に取りやすい魅力的な徳利や杯などを取りそろえて、来店者で賑わっていました。 繭山龍泉堂 京橋2丁目にある創業1905年の老舗、繭山龍泉堂は、今年はArts of Asiaと題して専門の中国陶磁はもちろん、縄文土偶やインドの細密画、ペルシャ陶器、ローマンガラス、鍋島などの色絵磁器など、アジアの多彩な美術が紹介されました。 そしてRYUSENDO GALLERYでは、龍泉堂が陶芸作家伊藤秀人さんと協力して制作している「CELADON-FLAT」の展覧会を開催。一点一点微妙に異なる色合いと「貫入」と呼ばれる微細に入ったひびが見どころの鑑賞に特化した青磁の作品です。そして、作品と一緒に置かれた美しい古美術の青磁作品も光を放っていて、眼福の展示でした。 megumu art 水戸忠交易に勤めていた丸山恵さんが、昨年7月にオープンした現代工芸のギャラリー。こちらも初参加。独特の技法で精緻な白磁を制作する陶芸作家青木岳文さんの個展を開催。青木岳文さんはTAAのイベント「アーティストトーク」にも参加されていました。 骨董の店 甲斐 甲斐は今年で45周年。それを記念して「甲斐に遊ぶ 45周年記念—優美なる骨董店—」を開催しました。ビルの2階ですが、中に入ると、どことなく鄙びた風情があって、民藝の薫陶も感じるような居心地のいいお店です。展示は平安の装飾経や中国・北斉時代の白玉半迦思惟像といった仏教美術から骨董好きなら誰しもたまらない酒器や根来盆まで、錚々たる作品が並びました。 稲村美術 こちらも初出店。昨年12月にオープンした東洋陶磁を中心にしたお店です。オープニングは白磁展を開催されていて、店主の稲村全史さんは単色や白磁が一番好きとのことでしたが、TAAでは五彩を集めた企画展に挑戦。TAA2025のガイドブックではあえて白地に文字だけを載せた企画展紹介を掲載していて、稲村さんの鋭い感性を感じました。展示では、中国金時代の宋赤絵や明時代の古赤絵、清時代の康熙五彩など華やかな五彩たちを拝見することができました。TAAより一足早く始まった展覧会ですが、終始たくさんのお客様が訪れていました。 風 招 仏教美術を得意とする風招は、今回で4回目となる「仏教美術の伝播」展。古代中国の石仏や金銅仏、平安時代の鏡などが展示されました。TAAより少し早めに始まったので、初日に来られた本気のコレクターも多かったそう。会期中は今回のTAA特別企画のひとつ「横川志歩のなげいれの花」を観にこられたお客様も多く、「2箇所に生けていただいたら、小さな店なので混雑して見づらい時間もあって申し訳ないくらいでした」とのこと。 Gallery MARI 古代オリエント美術専門のギャラリーマリでは、「掌のオリエント古美術」と題して愛らしい小さな作品が中心の展示会を開催。数千円で手に入るトンボ玉などもあり、初心者の方にも楽しめるものがある嬉しいラインナップでした。4月26日、27日には、明治学院大学名誉教授で作家の巖谷國士さんが、西アジアの古代遺跡を訪ねたを振り返りながらオリエントと地中海の古代文明をめぐる講演会を開催。多くの申込みがあり、巖谷さんのお話にたくさんの方が熱心に聞き入っていました。 前坂晴天堂 東京美術倶楽部の東美アートフェアなどでは鍋島や古九谷など高価な逸品を扱う前坂晴天堂ですが、TAAでは毎年「普段使いの古伊万里展」を開催しています。江戸期の古伊万里食器をSALEで展示販売。100年以上前のうつわが手頃な値段で手に入るので、会期中はいつもたくさんのお客様でにぎわいます。筆者も昨年は柿右衛門の白磁陽刻の小皿をゲットして、毎日使って楽しんでます。今年は佐藤由美子さんのテーブルコーディネートや「美術解説するぞー」さんの鑑賞ツアーもあって、さらに盛り上がりました。 壺中居 壺中居はご存知日本橋にある創業1924年の老舗古美術店。さくら通りの壺中居を起点として東仲通りの繭山龍泉堂までが通常骨董通りと言われています。そして壺中居と繭山龍泉堂の店舗は、どちらも建築家・東畑謙三(1902~1998)の設計によるもの。重厚で美しい佇まいは建築ファンの間でも知られています。 今年のTAAでは、「掌中緑陰 高麗青磁小品展」を開催。朝鮮・高麗時代(918~1391)に作られた、味わい深い小品が展示されました。中国・北宋時代(960~1127)の青磁の影響を受けつつも、高麗ならではの優美な表情が大変魅力的です。「翡色(ひしょく)」と呼ばれる美しい釉色、象嵌技法で表現された菊花や鶴、水鳥が愛らしく、初めての方でも手に取ってみたくなる魅力が詰まった展示内容でした。 *東京アートアンティーク2025は、東京の日本橋、京橋、銀座の美術店が参加する”美術まつり”。例年ゴールデンウィーク直前の3日間に開催され、2025年は86軒と1団体が参加し、4月24日〜26日に実施された。会期中は全ての参加店がオープンしているので、”アートめぐり”と”街あるき”を楽しめる格好の機会だ。 ▷ 東京アートアンティーク2025 のウェブサイト https://www.tokyoartantiques.com/ ▷ 関連レポート #1 3人のアーティストが美術・工芸の継承と発展を語らう #2 いざ美術店へ|美術と街を楽しむ 「美術解説するぞー」と行く! 鑑賞ツアー #3 骨董のうつわで彩る”食”と”花”の空間コーディネート RELATED ISSUE 関連書籍 目の眼2025年8・9月号No.582 古美術をまもる、愛でる 日本の古美術には、その品物にふさわしい箱や仕覆などを作る文化があります。 近年では、そうした日本の伝統が海外でも注目されるようになってきましたが、箱や台などをつくる上手な指物師、技術者は少なくなっています。 そこで今回は、古美術をまもる重要なアイテムである箱・台などに注目して、数寄者のこだわりと制作者たちの工夫をご紹介します。 試し読み 購入する 読み放題始める POPULAR ARTICLES よく読まれている記事 百済から近代まで 歴史の宝庫、韓国・忠清南道(チュンチョンナムド) History & Culture | 歴史・文化 茶の湯にも取り入れられた欧州陶磁器 阿蘭陀と京阿蘭陀 Ceramics | やきもの 秋元雅史(美術評論家)x 北島輝一(ART FAIR TOKYOマネージングディレクター) スペシャル対談|アートフェア東京19の意義と期待 People & Collections | 人・コレクション 連載|真繕美 古唐津の枇杷色をつくる – 唐津茶碗編 2 Ceramics | やきもの 骨董ことはじめ② めでたさでまもる 吉祥文に込められたもの History & Culture | 歴史・文化 白磁の源泉 中国陶磁の究極形 白磁の歴史(2) 新井崇之Ceramics | やきもの 目の眼4・5月号特集「浮世絵と蔦重」関連 目の眼 おすすめバックナンバー 1994年9月号「写楽二〇〇年」 Calligraphy & Paintings | 書画 骨董・古美術品との豊かなつきあい方② 自分だけのコレクション、骨董品との別れ方「終活」編 Others | そのほか 展覧会情報 装い新たに 荏原 畠山美術館として開館 History & Culture | 歴史・文化 リレー連載「美の仕事」|澤田瞳子 澤田瞳子さんが選んだ古伊万里 澤田瞳子Ceramics | やきもの 美術史の大家、100歳を祝う 日本美術史家・村瀬実恵子氏日本美術研究の発展に尽くした60年 People & Collections | 人・コレクション 世界の古いものを訪ねて#1 ジュドバル広場の蚤の市|ベルギー・ブリュッセル 山田ルーナOthers | そのほか